13人が本棚に入れています
本棚に追加
Epilogue 出港
全てを終えたティガはグレート・イナグアで悠々自適の日々を送っていた。
マイアミで起こった信じられない事実の数々はただちに英国、スペイン、ポルトガル、フランス、オランダ…… 各国のお偉方が知るに至った。荒唐無稽でありながらも事実は事実、信じざるを得ない。
龍もレオパルドの読み通り数は少なくなっていた。ブリック船やフリゲート船で全力を出せば多少の犠牲を伴い倒せる相手であるために龍の全滅は近い。
ハルモニア・ザ・オーシャンのような無茶苦茶な相手はいないとされている。
ティガが最後に出会ったスパルトイたちも「私掠船船長」として各国に雇われている。ただ、裏切る可能性が高いために厳重な監視が常につけられる状況となっていた。
アルキオン船長は自分の全ての罪を認めキングストンの牢獄にて投獄中である。反省の弁は述べているものの、罪が多すぎるために死刑を免れるのは非常に難しい。龍牙海賊団だが…… 団長の捕縛により解散することになった。
マイアミの地であるが、龍がもういないと言うことで再び移民が始まり以前のような繁栄を見せるようになった。それでも海流の関係でスペインの力が強く、貿易の中心地になることは変わりない。それを掠奪せんと海賊たちが集まるようになっていた。
自由号は先の戦いでほぼ廃船となってしまった。しかし、グレート・イナグアの船倉で修理が行われ、石炭と車輪で動く蒸気船へと生まれ変わった。
ティガは新しく生まれ変わった船長室にてマイアミの現状を聞き「辞令」を受けていた。
父がかつて受けた「辞令」を息子の自分が引き受けることになるとは感慨深い。机の上に突っ伏して物思いに耽っていると、副船長のハリマオが呼び出しにかかった。
「船長、出港の時間です」
ティガは操舵輪を握った。その瞬間に冷たくも心地よい一陣の海風が吹き荒れる。
「いい風だ。気持ちいい」
ティガは天を仰ぐ。一等航海士のアンティコネが手鏡で「快晴」のサインを光で送る。
波は穏やか、空も綺麗、この二つが交差する海へと自由号は漕ぎ出していく。
まだ、声変わりもせぬ高い声でティガは叫んだ。
「出港! 目標、マイアミ港!」
おわり
最初のコメントを投稿しよう!