最終章 龍牙

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ハルモニア・ザ・オーシャンはここから追撃の手を緩めない。今度こそはと言わんばかりに歯をガチガチと鳴らし始めた。いち早くそれを確認したティガが立ち上がり、面舵いっぱいに切る。 「全開帆(フルセイル)! 風に乗り奴の炎を回避する! 総員、揺れに備えろ!」 ハルモニア・ザ・オーシャンの口から炎が放たれる。左回りの風を(セイル)に受けた自由(フリーダム)号は前方一時の方向へとその身を進める。 火球は帆の左上面を僅かに掠めて岩壁に激突した。 帆が僅かに燃えるが吹き抜けの強風に煽られる程の大きな火ではなかったためにすぐに消し飛ぶ。 ハルモニア・ザ・オーシャンは翼をゆっくりと動かしながら前へ前へと近づいてくる。自由(フリーダム)号の左舷正面にハルモニア・ザ・オーシャンが接近中と言う形になる。 チャンスだ! ティガは左舷砲手全員に向かって叫ぶ。 「ギリシャの火! 左舷側砲全弾発射!」 ギリシャの火の業火がハルモニア・ザ・オーシャンの体を包みこむ、更にその体に大砲の雨嵐が叩き込まれる。しかし、悲鳴の一つも上げない。 ダメージなど全く無いかのようにハルモニア・ザ・オーシャンは右手の爪を振りかぶりながら水面スレスレを飛び、自由(フリーダム)号の前方を通り抜ける。船首楼甲板にて前方確認を行っていたアンティコネがティガに向かって叫ぶ。 「前方補助帆(フォアステイスル)、破損! 全開帆(フルセイル)時の運行速度、ダウン!」 やっこさん、足を奪いに来たか。このまま(セイル)をジワジワと破られてはジリ貧だ。 足を奪いきったところを一気に殺られる。これまでの食らいにくるだけの龍とは一味も二味も違う。ティガは奥歯を噛み締めて怒りを露わにする。 ハルモニア・ザ・オーシャンはいつの間にか右舷前方へとその身を移していた。 「右舷! 機関砲側砲全弾発射! 左舷砲手総員はすぐに装填! 次に備えろ!」 これは流石に読まれていた。ハルモニア・ザ・オーシャンはふわぁりと飛び、右舷からの攻撃を全て回避した。腹立たしい奴め、次はどっちだ?  ティガは舌打ちを放ちながら周囲を見回す。いたのは正面だった。しかも頭から体全体を使っての体当たりを仕掛けてくる。あんな巨体の体当たりを正面からマトモに喰らえばこれこそお陀仏だ。船首砲と船首設置の火薬樽で足止めをするか? いや、あれだけの勢いを抑えて止めるような勢いはない。 万事休すかと思った瞬間、再びティガに雷鳴が走る。一番頼ってきたあいつを忘れていた! 
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