最終章 龍牙

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 自分にここまで害を与えた敵は絶対に許さない。ハルモニア・ザ・オーシャンは火球を放ち自由(フリーダム)号を撃沈させようとした。これまでの相手は皆この火球で沈めることが出来た。だから今度もこの火球で終わる。ハルモニア・ザ・オーシャンは勝ちを確信し火球を吐き出した。火球はメインマストに直撃した、ティガは「惨めに下手に生き長らえさせなくてもいいのに…… 神様って意地悪だなぁ」と、心の中で呟きながら力なく操舵輪の前で倒れた。その際に舵は左に回され取舵いっぱいとなる。 メインマストであるが、先の龍牙(ドラゴンファング)海賊団襲撃の際に静策(シュラウド)二本で支えるはずなのに、一本で支える羽目になっていた。これだけでメインマストは不安定な状態。更にそれに加え大砲が一発メインマストの根本にめり込む状態になっていた。この状態で今まで倒れなかったのが不思議なぐらいである。 そして最後に止めを刺したのはハルモニア・ザ・オーシャンの火球。ついに自由(フリーダム)号のメインマストは折れた。船員(クルー)の折れた心がそのまま形になったかのように根本から綺麗に折れたのである。 それと同時に取舵いっぱいとなり思い切り左に舵を切った自由(フリーダム)号、メインマストの天辺がそのままハルモニア・ザ・オーシャンの頭に向かって落下し、重力に乗せて脳天に突き刺さる。 頭を貫かれて生きている生物など存在しない。水銀を飲むことで再生能力を発揮する龍でも絶命した後ではもう再生は出来ない。一度沈んだ後の復活は水銀を体の中に摂取しての復活であった。 もし、ここにある湖の水が水銀でなかったとすれば、とっくの昔に勝負は着いていたのである。 更に一陣の風が吹いた。自由(フリーダム)号は絶命したハルモニア・ザ・オーシャンを宝の山がある湖の畔へと運ぶ。自由(フリーダム)号はその畔の上で座礁し打ち上げられた。その衝撃で船員(クルー)は全員気絶してしまった。 彼らは勝利したことに気が付かなかった……
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