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困って、誉さんに視線を送ると、誉さんは何か考えている様子だった。
「誉さん?」
私が呼びかけると、こちらを向いて、
「ここはひとつ、試しに占ってみるか」
と言った。
「占う?」
「ああ。この人の親父さんの行方を占ってみるんだよ」
意味が分からなくて瞬きをした私の隣で、母親も不思議そうな顔をしている。
「ああ、なるほど。夕占をするんか」
颯手さんだけが納得した様子で頷くと、
「この男は、実は高名な占い師なんですよ。行方不明者の捜索や、失せもの探しが得意なんです。テレビなんかにも出たことあるんやけど……知りません?」
誉さんを指差して、すらすらとでまかせを口にした。
「そうなんですか?すみません、存じ上げなくて……」
母親が目を丸くしたので、誉さんは颯手さんをちらりと見た後、苦笑した。
「もしよかったら、あなたのお父さんの行方を、占わせてもらえへんやろか?ここで会うたのも何かの縁です。お代はいただきませんから」
にこにこと颯手さんに笑顔を向けられ、母親は「どうしよう」という表情を浮かべた。
「誉さ……この占い師さんの占いは百発百中です。きっとお父さんの手がかりがつかめますよ!」
なぜ占いなのかよく分からなかったが、私も颯手さんに合わせて、母親に向かって力説した。
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