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私たちは話しながら靴を脱ぐと、宝物殿に上がった。右手の部屋が展示室になっていて、中に入り、真っ先に目に付いたのは、壁面展示ケースの中の3領の立派な鎧だった。
「紫絲威大鎧……へえ」
説明書きには「国指定重要文化財」と書かれている。
「なんだか、すごい宝物みたいですね」
「立派だな」
展示室には、その他に、火縄銃や、弓や矢尻、鞍などが飾られている。勝負事の神様で武家からの信仰も厚かったようなので、武具の奉納なども多かったのかもしれない。
『鶴丸』という太刀は、一番奥に展示されていた。隣には「三條小鍛冶宗近」作の宝剣と、無銘の刀と、「祐定」という銘の刀が飾られている。
4本の日本刀は、刀身に照明が当たってピカピカと輝いている。美術的価値がいかほどのものか、私にはよく分からなかったが、感覚的に「美しい」と思った。
「俺は刀剣のことには詳しくないから、よく分からんな。でも、この日本刀には魂が籠っているような美しさを感じるな」
誉さんが私が思っていたことと同じ感想を口にした。
私たちは、しばらくの間、じっくりと日本刀を鑑賞し、その前を離れた。
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