1.藤森神社の紫陽花

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(もう……)  誉さんの悪戯にぷうっと膨れていると、 「悪かった。拗ねるな。せっかく来たから、写真を撮ってやろうと思っただけだ」 誉さんは私をなだめるように、ぽんぽんと頭を叩いた。 (ぽんぽんは……ずるい)  上目づかいで誉さんの顔を見る。 「颯手にも見せてやれ」 「変な顔をしてるから、嫌ですっ」 「なら、消せばいい」 「……せっかく誉さんが撮ってくれたんですから、消しません」 「そうか」  誉さんが、ふっと微笑んだ。  目つきが鋭く、頬に傷のある誉さんは、普通にしていたら、「ヤ」の付く人に間違われそうな強面だ。けれど、笑うと優しい雰囲気になり、私はこの顔が大好きだ。
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