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(もう……)
誉さんの悪戯にぷうっと膨れていると、
「悪かった。拗ねるな。せっかく来たから、写真を撮ってやろうと思っただけだ」
誉さんは私をなだめるように、ぽんぽんと頭を叩いた。
(ぽんぽんは……ずるい)
上目づかいで誉さんの顔を見る。
「颯手にも見せてやれ」
「変な顔をしてるから、嫌ですっ」
「なら、消せばいい」
「……せっかく誉さんが撮ってくれたんですから、消しません」
「そうか」
誉さんが、ふっと微笑んだ。
目つきが鋭く、頬に傷のある誉さんは、普通にしていたら、「ヤ」の付く人に間違われそうな強面だ。けれど、笑うと優しい雰囲気になり、私はこの顔が大好きだ。
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