1.藤森神社の紫陽花

6/44
588人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
 「本当に私のことが好きなのかな」と考えて、ハッとした。 (私、誉さんに『好き』って言って貰ったことない……!えっ、ちょっと待って、『隣にいろ』って言われたことはあるけど、それって『好き』ってことだよね?合ってるよね?)  内心で狼狽していると、 「愛莉?変な顔して、どうした?写真のこと、まだ怒ってるのか?」 誉さんに申し訳なさそうな視線を向けられた。 「ち、違います」  ふるふると首を振った後、 「……誉さん」 私は彼の袖を指でつまんだ。 「……私のこと、好き、ですか…………?」  勇気を出して問いかけると、誉さんは目を丸くした。 「急になんだ?」 「いや、だって……はっきり言われたことないな、って思って……」  唐突な問いかけだったと、恥ずかしさのあまり、頬が火照った。
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!