1.藤森神社の紫陽花

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 神馬像を横目に見ながら馬場(参道)に向かうと、左手に宝物殿があった。無料公開中だったので見学して行こうということになり、建物の中に入ってみると、入ってすぐの場所に漫画調の男の人のイラストのグッズがたくさん飾られていて、びっくりした。 「どうして、アニメグッズのようなものが飾られているんでしょう?」  不思議に思って、誉さんに問いかけると、 「刀を擬人化したゲームが流行ってるらしいぞ。現代刀工の藤安将平(ふじやすまさひら)という人が、『鶴丸』という太刀の写しを作って、藤森神社に奉納したらしい。この兄さんは、その元の太刀のキャラクターなんだそうだ。それにちなんで、ゲームファンがグッズを奉納しているみたいだな」 と教えてくれた。 「詳しいですね」  なぜ誉さんがゲームに詳しいのかと思って尋ねると、 「仕事柄な」 誉さんはそう言って笑った。誉さんの本業は漫画家なので、ゲームなどの流行りは、知識として押さえているのかもしれない。 「写しっていうことは、『鶴丸』っていう太刀そのものじゃないってことですか?今、その元の太刀はどこにあるんでしょう」 「皇室の御物らしいな」 「じゃあ、元の太刀は見れないってことですね」 「だな」
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