漢の戦い。

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 そして、急に西野の手の動きが止まった。どうしたかと教室内の視線は彼に集まる。それから5秒ほど時が止まったかと思うと、彼は両手を顔に当てて小さい声で呟きだす。 「だってさ、こんな男子校に入ってさ。女の子と触れ合う機会がない中でさ、可愛い子と写真が撮れるってなったらさ、後先考えず飛びついちゃうじゃん。だって思春期の男の子だぜ、俺。あのかりんちゃんが俺に向かって笑顔を向けてくれたんだぜ。そりゃー騙されちまうっつーの・・・・・・」  周りの者たちがどうしようかと考えていたら、ガラリと教室のドアが開く。自然とみんなの注目が集まるが、その人は怯む様子はなくむしろ当然かのように振る舞う。その堂々とした態度が、彼女の可憐さをさらに引き立てていた。 「あの、本日お邪魔させていただきました高橋かりんです。お取り込み中でしたでしょうか」  彼女は男なら一度は夢に見るさらさらロングの黒髪を惜しげもなくさらして、扉に半身を隠しながらこちらを伺うようにしている。舞台の上に立って完璧な笑顔を振りまいていた時とは違い、今の笑顔は戸惑いの色を見せており完璧ではないところが見えて身近に感じ、より魅力的に思えた。
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