漢の戦い。

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 女の子にも慣れていないな男子校生徒には、女の子な彼女の問いかけに応えられる者はいなかった。男子生徒は見惚れるか、情けないものは目を逸らす始末。真ん中の二人に関しては、絶望の顔をして彼女を見るだけだ。  今まで空気に徹していたおじさん先生が、大きく咳払いをして存在感を主張する。すると、視線は彼に集まりみんな一様に「先生の存在、忘れてた」と言う顔をする。実に悲しいことだと思うが、先生は気にすることなく笑顔を浮かべて彼女に向かって歩きだす。 「御足労頂きありがとうございます。本日は後夜祭の出演だけの予定のところ、生徒の思い出作りにと写真撮影の許可を頂いたことを生徒に代わってお礼を申し上げます」  先生の大人な態度に、今までで一番頼れると感じるとか失礼なことを生徒は考える。生徒が失礼なことを考えていることを先生は感じ取るが、こんな場でいちいち指摘はしてやらない。だって、動物の様にギャーギャー騒ぐ姿が目に見えているのだから。  そんな空気を読めるはずもない若い彼女は、先生の笑顔ににっこりと返して大袈裟なジェスチャーを交えながら感謝を述べる。
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