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「でね、記念写真を撮ってもいいかな」
彼女の確信をつく言葉に場の空気が凍る。みんなが視線を彷徨わせる中、いつもは頼りない先生が先陣を切って口を開く。
「すみません、今誰が写真を撮るかで揉めてまして」
右手で頭をかきながら遠回し、かつ申し訳なさそうに「あんたのせいで揉めてるんだ」と言う先生は、続けて申し訳ないと腰を折る。その言葉に、彼女はそんなことないと全身で伝えるように首を横に振る。そして手も、横に全力で振った。
「いえいえいえっ! 私がお願いしたことですし、少しでも嫌だと思うなら無しでいいですし」
彼女はそう言うと顔を下に向けて、語りだす。
「すごく個人的な話になるんですが、私は高校の頃には芸能活動を軽くですけどしてて、こう言う学校行事に関わることってなかったんです。だから、今日皆さんの文化祭を見て、すごく楽しかったと言うか。私も参加している気分に勝手だけど、なったんです。それで気分が高揚して写真なんかお願いしちゃって・・・・・・。
なんか、この高校の文化祭に参加したって目に見える思い出が欲しくなったんです」
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