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【鬼の食卓】
その日の昼飯はカレーライスになった。AランチもBランチも、食べる気がしなかったからである。こういう際はカレーに「逃げる」しか方法がない。外へ行きたくなるが、急用の電話がかかってくる場合があるため、それもできない。結局、ここのカレーを食べる運命になっているのだ。
田宮版『白い巨塔』を観ていると、たまに院内食堂の場面が出てくる。財前(田宮二郎)先生も里見(山本學)先生も、大抵カレーライスを食べている。同食堂にはカレーとコーヒーぐらいしか、頼むものがないようだ。
大病院のレストランにしては、いささか寂しいメニューである。無論これには「制作費の都合」も含まれているのだろうけど。
両医師は、食事に関してはほとんど興味がないように感じられる。異常に忙しい日々を送っているからである。食事に割く時間が惜しいのだ。カレーであろうが、牛丼であろうが、空腹を埋めることができれば、それでいい。おそらく、原作者の山崎(豊子)先生もそうだったのではあるまいか。
財前先生と里見先生は、性格や専門分野は異なるが「鬼である」という点ではまったく共通している。前者は野望の鬼、後者は研究の鬼である。
仲が良いとは云えない二人だが、彼らが力を合わせると、物凄い威力を発動する。里見先生(内科)が見つけた悪質癌を財前先生(外科)が切除する展開には、血が騒ぎましたね。鬼の共闘が、病魔を打倒した瞬間であった。〔1月12日〕
♞田宮版『巨塔』は1978年6月から翌年1月にかけて放送された。
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