【序章】 生まれたの世界とのサヨナラの記憶

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 自分で言うのもなんだけど僕の人生は幸運な方だったと思う。  家族は全員元気だし、頭脳も運動神経も普通で、容姿も悪い訳じゃない。生活が貧しいこともなく、高校でも悪い連中に目を付けられることもなかった。生きることに煩わしさを感じることも辛いと感じることさえなかったんだ。  だけど……そんなものは長い人生の中のたった十六年間の話。【運】というものが波のように上下するものなのか、それとも蓄積されるものかは判らない。けど、その日僕は人生最悪の不幸に見舞われたんだと思う。  僕の最期の記憶は大きな地震が起こって傾いた鉄塔が迫ってきた光景──。  薄れ行く意識の中で沢山の悲鳴とサイレンの音が聞こえた。   
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