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【第二章】 第八話 休める時に休まないと、後々もっと休むことになる
初めて『神の能力』っていうのを作ってみたけど……何とも言えない感覚だった。以前の僕じゃとても理解できない感覚だから説明も難しい。敢えて言うなら『体内の熱を集めて固める』──みたいな感じ?お陰で僕は何か風邪をひいたような気だるさに襲われた。
う~ん……力を作る度に毎回これじゃ大変だなぁ。………。とにかく、これで全国の猫達に若い頃の美緒さんの顔を……。
「ンナルゥ~……」
「えっ? 力を使うのはやめとけって?」
「ニャ」
トムが休めって言ってる……。何でも、存在の力が薄れているとかって……このまま力を使うと最悪消えるかもって……。
「……。わかった。ありがとう、トム……教えてくれて」
「ニャ」
「じゃあ今日はもう休もう。マウとトムも自由にして良いからね。それと、ご飯を用意しておくから気が向いたら下に降りてきてね」
「ニャア~!」
「ンナァ~ゴ!」
僕はもうマウを……勿論トムも悲しませる様な真似はしないって決めたんだ。だから大人しく休むことにした。
ベッドに潜って目を閉じた僕は、地下空間の住居があって本当に助かったと思った。ありがとう、ギデリさん。
思えば神様なのに僕みたいな小市民に随分と配慮してくれたよね。見た目はともかく、本当に面倒見が良い神様だと思う。いつかお礼が出来れば良いなぁ……。
そして──眠りに就いた僕は、日本に暮らしていた頃の家族の夢を見た。
僕が死んだ後の家族は凄く悲しんでいた。考えてみれば僕の遺体──元の身体は鉄塔の下敷きになったんだよね。多分酷い状態なんだろうな……。
特に母さんと姉さんは落ち込んでいた。父さんはあの親子を救ったことを泣きながら『良くやった』と褒めてくれていた。弟は今一つ現実感が無いみたいだった……。
いつか逢えるって分かっていても家族が悲しむ姿が胸を裂かれるように辛い。僕は本当に馬鹿なことをしたんだね……。
でも……。それだとあの親子……生まれてくる子も救えなかった。僕は……どうしたら良かったのかな……。
いつか……僕の力が大きくなれば皆を救えるのかな……。誰も悲しまない世界なんて夢物語だけど、世界が沢山あるならそんな『セカイ』があっても良いんじゃないかと本気で思う。少なくとも『暁』は、戦争が無い世界にはなって欲しい。
そんなことを考えている内に朝が来て僕は寝不足になった。神になっても寝不足になるんだ……。空腹だったり寝不足だったり、あと汗も出るんだよね……何かチョイチョイ不便の様な気がする。
………。何か重い。
ふと顔を上げて胸元を見ればマウが乗っていた。良く見ればトムが添い寝してるし……。
この世界にきて出来た大事な家族。前世からの縁ではないと思うけど、きっと今は強い絆がある……そう思うんだ。
少し早めに起きた僕は体調を確認。随分楽になった気がする。これなら今日は美緒さんを捜せるかな?
マウとトムが僕に気付いて目を覚まし朝食に……。そうだ……こっちの問題もまだ解決していないんだった。
安定した暮らしには安定した収入……。マウやトムにはひもじい思いをさせたくないからね……。
朝食を終えた僕は社に戻り色々と考える。今後は出来るだけここから来訪する参拝者を見ていた方が良いかな……。
そうなると、マウとトムを沢山あてにしないといけないけど……。
「ンナァ~ゥ」
「ンナルゥ~」
「うん。頼りにしてるよ。これからは三人で頑張ろう」
参拝者が増えれば出来ることも増える。少し気合いを入れなくちゃね。
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