知り合った経緯(いきさつ)

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「こんなの初めて・・」 車に戻りシートに腰を落ち着けた静江さんはそう言った。そして・・ 「フフっ・・恥ずかしいけど私とっても興奮しちゃった・・」と言った。 私は「まだまだ・・これからですよ・・」と応じた。静江さんは嬉しそうに小さく微笑むと、私の方に体を寄せ口づけをせがんだ。 「ねえ・・栄子もこんな気持ちだったのかしら・・」 私の胸に顔を押し付けたまま静江さんがそう呟いた。先程も少し触れたが栄子とは私の小説に出てくる人物で、島津と言う年下の男によって還暦を迎える前に性の悦びに再び目覚めていく女性だ。 「そうですね・・きっとこれから訪れる快楽の予感に身を震わせていたんだと思います」とそう言うと「快楽の予感・・」と静江さんも小さく呟いた。そして・・。 「ねえ、今日下着をはかないで・・、橋本さんに逢う前に外を歩いて待ち合わせ場所まで来たでしょ・・そのぉ・・とっても恥ずかしかったけど、もう無理かもって思ったけど・・でもなんだか、今まで感じた事のない何ともいえない快楽っていうのかしら・・上手く言えないけど・・感じちゃったのよね・・変態かしら・・あたしって・・」 「逢う時は下着をつけずに・・」小説の中で栄子が最初に島津に約束させられた事だが、同じ様に私も静江さんにそれを要求した。もし静江さんの決意が本物なら約束を守ると思ったからだ。 「そのあたりの気持ちを日記に書いてみたらどうですか・・自分が感じた事を正直にごまかさずに、ありのままに・・」と、そう言うと静江さんも、そうよね書いてみると言って頷いた。きっとそんな積み重ねが静江さん自身を解放し、自由に表現出来る様になる第一段階になるのだろうとそう思った。
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