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ところで話は少し前に戻るが、私がこの講座を受けようと思ったのは、純然たる趣味で書いている「官能小説」に少しでも役立つのでないかと思ったからだ。
才能も技術も運も無くプロを目指していると言う訳でも無いが、ネットなどに小説をあげると時々読者からの反応がありそれが楽しくて少しでも上手くなろうと参加したのが動機だった。勿論「官能小説を書くのが目的」とは誰にも言っていない。
一方、静江さんは元々文学少女だったとの事だ。古今の名作は勿論、最近流行のミステリーや時代小説まで幅広く読むそうだ。
講義が終わると、たまたま帰る方向がいっしょだった私達は最寄駅までぶらぶらと話ながら帰った。
「女の平均寿命って今85か6よね・・、まだまだ先は永いのねって思うと、何かしなきゃと思って」
静江さんは3年程前にご主人を亡くされているそうで、やっと最近自分の事を考える事が出来る様になったそうだ。
「キザに聞こえるかもしれないけど、小説を書くことで新しい自分を発見しようと思って」そう言って微笑んだ。
私はあまりにも自分とは動機が異なるので心の中で苦笑してしまった。
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