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この日、駅で互いの帰りの電車を待っている時、私は講義でのこの講師の言葉を話題にしながらこんな事を言ってみた。
「恋愛小説は僕には今一つピンとこないなぁ官能小説ならともかく・・」
そう言った後すぐにしまったと思ったが、意外にも静江さんは少し微笑みながらこんな風に応じただけだった。
「橋本さん(※私の名字)も官能小説、読むの?」
「ええ・・まあっ・・僕もその・・一応男ですから・・」などとドギマギしながら応えた。
静江さんはその後も微笑んでいるだけで特に何も言わなかったが、ホームに電車が滑り込んでくると乗り込む寸前にポツリとこんな事を言った。
「あたしも読んでみようかなぁ・・・官能小説」
私は意表をつかれて静江さんを見たが、彼女は既に電車に乗り込んでおり微笑みながら手を振っているだけだった。ドアが閉まり二の句が継ないままただ電車を見送った。
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