ガーベラの花束に想いを込めて

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 俺、神宮寺 流星(じんぐうじ りゅうせい)は花が大好きだった恋人の月命日に必ず写真立ての前に花を飾る。  生前の彼女は小さなベランダで色んな種類の花を育て、その季節に華やかに咲き誇る花を見るのが大好きだった。  いつもの花屋で花を買いに店先に立つ。そしていつも花屋のおばさん(斎藤さん)に花を見繕って花束を作ってもらう。 「いらっしゃいませ」  カウンターに居たのは、斎藤さんじゃなくて、初めて見る女の人だった。  その女の人は瞳がくりっとして、長いまつ毛が印象が残る可愛らし顔をしていた。そして…奈津に似ていた。  セミロングの軽くパーマがかかって、ふわふわしている髪の毛は横に流して1つに結んでいた。  その女の人を見た途端、ドキリとして目が離せなかった。思わず頬に熱が帯びて赤くなる。 新しい定員さんなんだと思う。  声をかけにくい、こんなときほど幾つになっても自分の人見知りな性格が嫌になる。 あー、どうするかな…斎藤さん、居ないのかな?花を選ぶふりをして、店内を見て回っていた。 「どんなお花をお探しですか?」 ふんわりとした笑顔で女の人が声をかけてきた。 「あの、3000円くらいの花束を…」 「お好みのお花はありますか?」 いつもなら斎藤さんが… 悩んでいると、斎藤さんが大きな声で 「あらっ!いらっしゃい!」 斎藤さんの姿を見て、ふぅ~助かった思う。 「神宮寺さんは、いつもの感じでいいのかしら?」 「お願いします」
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