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(side御割)
「「…………」」
ズゴーン。
「「…………」」
ズゴゴゴーン。
そんな効果音と交互に静寂が広がる、理解不能極まりない年明けの午後。
どうしてそうなってるのかって?
そりゃあ俺の目の前にある光景と、自分の状況からそうならざるを得ないからに決まってンだろ。ふざけろ。
順を追って説明してやる。
まず目の前にある光景。
この二人が異様の一言だ。
一人はやたら整った二次元じみた顔立ちの、彫りの深い外国人。
国籍不明だが、とにかく美形だ。
動くたびにサラリと揺れるやわらかな黒髪を左側だけかきあげ、覗いた切れ長の双眸は一度目が合うとしばし視線を逸らせない魅力がある。
シンプルな黒衣にゴールドアクセサリーをシャラシャラ揺らす色男は──魔王。
……いや、俺の頭がおかしくなったわけじゃねぇかんな?
ガチめの魔法とかも使ってもらったし、頭に狼の耳やら尻尾やら、自在に動く鎌も出して見せてもらった。
そうされたら信じるしかねぇだろ。
だって西洋の豪奢で広々とした洋室で、天井につきそうなくらい大きな狼に変身されたんだぜ? 信じなかったら食われるだろ。ただでは食われねぇけども。
で、だ。
もう一人が、その魔王の膝に横抱きに座らせられている人間。
どこか愛嬌があるが端正な男らしい顔立ち。着物とかの和装が似合いそうな硬派な魅力がある男だ。
俺と同じかそれに近いくらいの背がある体躯は服の上からでも鍛えているのがわかる。ちっと細いけどなかなかイイ筋肉だ。
そんなどこからどう見ても普通以上にしっかりめの男であるそいつは、大河 勝流──魔王の嫁。
……いやだから、俺の頭がおかしくなったんじゃねぇって言ってんだろ!
事実なんだよッ! 事実目の前で膝抱っこのまま「え? いつも通りですけど? なにか?」的な顔でこっち見てんだよッ! だからお互い無言なんだろうがッ!
ピキ、と額に青筋が浮かぶ。
そのツッコミを入れようかと思うが、まあ結婚してるなら夫夫のコミュニケーションに他人がケチつけんのもおかしいだろ。
ということで黙った。──が。
最後に最も言葉を失う状況が、こちら。
「あー……御割先輩を膝抱っことか、結構重いんだわ。先輩体重何キロですか? 言いましたよね? 初めてケツに突っ込んだ時キツイからジム行く頻度減らし「あああああ黙れ殺すぞ三初ェッ! 文句言うならテメェが俺の膝に乗れやッ!」やです」
──だったら黙って俺を抱いてろこのフリーダム暴君がぁぁぁッ!
俺は頭の血管が数本引きちぎれそうな絶叫を、胸の中で響かせた。
素知らぬ顔でんべ、と舌を出す、魔界だろうがどこだろうがいっさいブレない後輩に、噛みつく勢いで怒鳴る。
そう。この世の地獄。
魔王と大河の謎コンビに相対する俺──御割 修介と、俺を事後写真で脅してオモチャとしてこき使う暴君──三初 要も、まったく同じ状態でテーブルを挟んで向き合っているのであった。
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