キス魔スパーキングデイ※【完】

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 汗や唾液で乱れきった表情を見られて眉根を寄せ、見られてイクのはいやだ、と声もからがらに潤けて訴える。  訴えてもアゼルはダメだと言う。  アゼルは酷いと言っても、ツンツン怒って俺が中でイクまで責める。  イッても止めてくれない。酷い。 「ぁえうぅ……っんぅ…っひん……っ」  こんな、後ろの穴を犯されながら勃起して、自分の先走りで腹筋を濡らしながら悶えるバカげた姿。  見たって楽しくないだろう?  俺よりお前のほうがかわいいからな。俺を抱くアゼルはかわいいんだ。俺よりずっとずっとずーっとかわいい。  ぐぽぐぽと内部を出入りする肉棒をわざわざ見せつけられて、恥ずかしいはずなのに気分の高揚が収まらない。  俺がアゼルを食べているみたいだ。  食いついて離さない体が、筋肉を痙攣させて悶絶する。  唸るように唇を噛んで睥睨するアゼルは、顔を真っ赤に染めていた。  ほらやっぱりかわいいぞ。  照れているアゼル、かわいい。  俺の旦那さんは世界一かわいいな。  かわいいかわいい俺のアゼル。  そう思うとキスがしたくなって、俺はアゼルの名を呼び、舌を伸ばす。  呂律が回らない。震える舌と唇を駆使して、一文字一文字訴えかける。 「あぜる、きす、しよ、う」  荒い呼吸で上下する胸が鼓動し、ツンと尖った突起を汗が伝った。  ビク、ビク、と二度目の絶頂の兆しに震える自身が、腰を打ち付けられるたびにトロリトロリと涙している。  眉間にシワを寄せて顔を近づけたアゼルは、不貞腐れて首を横に振った。  悪い酔っ払いは反省しろと言いつけ、前立腺を押しつぶすように角度を変えて抽挿を繰り返す。  襞を押し退けて肌がぶつかると、甘やかな快楽と恍惚感が脳を満たした。  だけど俺はキスがしたい。  アゼルとキスがしたい。  泣き出しそうな表情でアゼルの名を何度も呼び、蕩けた肉壁を蠕動させ、絡みつける。 「キスしたい、あぜる、あ……っ」 「っそっちで絡むな、お前は中まで、無駄に覚えがいいんだよ。どこもかしこもやらしいカラダしやがって……」 「んれ、もっ……アゼルと、キスできた、ら……っぉ、俺っは……壊れて、いい、んだ」 「────……ッ!」  噛みつくように口付けられると共に、俺の腹の中へ、マグマのような熱がドク、ドク、と濃密に迸った。  歓喜に恍惚とする内部がひくひくっと収縮を繰り返し、根元まではめ込まれたモノを惜しげもなく包み込んで絞る。  この瞬間すら気持ちいい。  体液の粘りも、射精の脈動も、ふふ、なんだかもう全部カワイイ。  だって、俺の腹に撒いてもなにも産まれないんだぞ?  ちょっと残念だが事実だ。  でも無駄なんだぞとは教えたくない気分なので、アゼルには秘密にしよう。  だからもっとお前の欲、一滴も残さず俺の中に飲ませてくれ。 「ぁ……んっ……ふ、……っ」  いつの間にか抱き抱えられた体をじっと密着させながら濃厚な白濁液をトクトクと注ぎ込まれ続けていると、身体中に多幸感が満ちていった。  舌を絡め取られ、唾液を啜られ、呼吸すら制限しながら貪るキス。  ドロ……と胸元を伝う白。  ん、俺も出ていたのか? 後ろが良すぎて気づかなかった。通りで気持ちイイと思ったな。まだ足りない。  アゼルのキスは、アゼルの味がする。  それをいつも不思議に感じていた。  同じ唇で、同じ舌で、同じ唾液の作りをしているはずなのに、どうしてアゼルとキスをすると〝これはアゼルの味だ〟とわかるのだろう。  俺のキスはアゼル味が固定。  体温やフェロモンがキャンディのように溶けているのかもしれない。  それなら、俺はキスでアゼルの細胞を味わっているのか。 「はっ……っん、ぅ……ふ」  唇が離れると、細い糸が引き、すぐに切れた。  それがもったいなく思えて、追いかけるように舌を伸ばし、浅く目を細めて、チュ、と甘くキスをする。  アゼルの舌先。  キスのついでに軽く吸って、ゆっくりまた離れると、アゼルはどういう感情かわからないひしゃげた顔で、俺を凝視したまま固まっていた。  んん、どうした? キスをしただけなのにまた拗ねているのか。そうか。  アゼルはかっこいいと言われたくて、かわいいが気に食わないみたいだもんな。うんうん。ふふふ。  それなら大丈夫だ。  俺は確かに、かわいいとめちゃくちゃにキスをしたくなる。  ──でもそれは〝かわいいから〟したくなっているんだぞ? 「愛してるから(・・・・・・)したくなるのは、アゼルだけ……お前だけだ」  この世でただ一人、お前だけ。  カッコよくてカワイくて世界で一番愛おしいお前と、キスがしたい。
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