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つか三初には嫁とか、なん、二次元か? 大河、そこんところ聞かねぇのか? 聞いてくれ俺の代わりになる早で。
テレパシーを送ってみるがふふふと笑う大河は「かわいいなあ」とでも言いたげで、魔王の真剣にとぼけた話をうんうんと聞いている。
おかしい。独特の空気感すぎる。
必死な俺の願いは届かず、だ。
「やべェ。こいつらあれか、バカップルだな? ……あと三初ェ。どの次元の嫁自慢したんだよ。既婚とか、ンなの知らねぇ。俺は不倫は断固拒否派なんだわクソ野郎が。チンコもげろ。不倫男に使わせるケツはねぇ」
三初が結婚しているわけない。
だが、万が一そうなら不倫なんて絶対に許せない。ナシをつけない横恋慕なんて、俺は断固お断りである。
誰かを泣かせて関係を続けるなら、スジを通せ。きちんと真っ向から頭を下げて挑み、戦うべきだ。
「くくく。二次元でも三次元でもないですよ。まー俺のコレはここのとこ先輩専用なんで、安心して使われてください。ね。嬉しいでしょ?」
「あぁッ!? 最低なクソ専用宣言ありがとよッ!」
「はい。どういたしまして」
そう思って三初を睨みつけると、本人はニマ、と目を細めて俺の腰をなでながらそんなことをのたまった。
反射的にバシッ! と手を叩き落としたのは仕方ない。
それに対してにこやかにお礼を受け取られたのも、俺の脳が沸騰する理由である。
ケッ、思った通りだぜ。
こんな不遜な男に嫁さんがいてたまるか。不倫なわけねぇだろ? 当たり前だ。……フンッ。心配して損したってぇの。
ほっと胸をなでおろした理由は、自分でもよくわからなかった。
とりあえず疑問を解消した俺の視界の端に、魔王と大河の夫夫が映る。
「って感じでな?」
「ふんふん」
「それで俺が〝コイツをドロドロに抱き潰してぇんだ〟って顔でそれを伝えたら、アイツは〝俺はグチャグチャに犯したいですかね〟って顔で笑ったんだ。だからドローだぜ」
「んん、抱き潰すと犯したいはドローになるんだな。なるほど」
「まぁ基本抱くんだ」
「そうなのか。俺はちょっと抱き潰されると困るから……〝よしよしとなでてあげたい〟だな。去年は一年、お疲れ様だ。いたわりたいし甘やかしたい」
「そうやってお前がやたらめったら光属性すぎるから俺が良心の呵責でデロデロできなくなんだろうがッ!」
「?? そ、そうなのか。それじゃあ、デロデロするか……」
「!」
大河がそういうと、自重しているらしい魔王がソワワッと気がはやる。
「ん……でも具体的にどうすればいいのか……アゼル、説明して欲しい。俺にどんなことをして、デロデロにしたいんだ?」
「!?」
「具体的に頼む」
「うおぉ、こっこの無自覚調教師がッ! そんなハレンチなこと言えるか!」
「ふむむ……昨年もした上で今年も散々ハレンチなことをするくせに、今更なにを言っているんだ」
「今年はせいぜい恥を知りやがれ! 俺のなッ!」
「アゼルのか」
しかし天然男の素の返しに、魔王はあえなく撃沈した。
素直にしてほしいことを頼めない気持ちは俺も性格上よくわかるので、こっそり魔王にシンパシーだ。
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