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心の中でエールを送ると、三初が「大河サンやるなぁ。嫁って強いのね」とクツクツ笑う。
(あ。そういえば……)
「なぁオイ。結局嫁自慢って、未婚のお前は誰の話してたんだ?」
「ん? んー……やむを得ず妥協して先輩の話ですね」
「止むを得ろよ。妥協すんなよ。俺で応戦すんなよ!」
あっけらかんと語られる真相に、俺はあぁなるほどと納得──するわけねぇだろ不遜の擬人化野郎がッ!
ガオウ! と吠えかかって三初を睨み頭突きを繰り出すが、ヒョイと避けられた。避けんな。むしろ反省して当たりに来いッ!
「まあ実質どれだけスケベな相方かっていう自慢だったんで、先輩でもいいやって。ほら、先輩って素人ビッチなドスケベじゃないですか」
「じゃないですかじゃねぇんだよ誰のせいだと思ってんだッ! そして誰がビッチだコラッ! 死ねヤリチン節操なし。突然爆発四散しろ。俺の呪いと日頃の行いの報いを受けて盛大に死ね。爆ぜろ」
「よく回る舌だなぁ……フェラはちっともうまくならねーダメ舌のくせに」
ううう、と唸り威嚇するが、微塵も効果を持たない三初はくくくと喉を鳴らし、俺の顎を掴んだ。
「オイコラ触んな」
「舌と上あご指でこすられただけで喘ぐイヤラシイ口してさ。たまにはカワイイこと言ってほしいものですね。指差して爆笑したあとボイス撮って、先輩のスマホの通知音を全部それにしてあげますよ」
「なぁどうしたらその先輩様を舐めくさってる極悪舌ちょん切らせてくれンだ? あ? すぐ済むからいっぺん口開けろや。ほんとすぐ終わらせてやる。一瞬で刈ってやる。先っちょだけでいいから刈らせろ」
「えーおにいさんこわぁい。先っちょだけって言って、絶対全部挿れるんデショー? こういう人ってだいたい生でシて責任取ってくんないクソ野郎じゃん。粗チンテクなしが許されるのは小学生までだよネー」
「マジ無理殺したい」
「ん? 愛してる? 奇遇ですね」
「脳みそどうなってんだよッ!」
──こうして。
思いつきで始めたダブル長編による年始の挨拶は、友好を深めつつもいつもどおりのやりとりで過ぎていった。
そしてお互い一度も「あけましておめでとうございます」と言わずお年玉も渡せずにいることに気がつくのは、ずいぶんあとの話。
敗因はそう。
天の声が作った性癖全開キャラたちのクセが、あまりにも強すぎるせいであろう。
了
作者や作品感が香るメタいのは苦手なのですが、番外編と割り切ればご都合主義にできるので、なかなか楽しいものですな。
好き勝手にして申し訳ない!
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