狐と狸とエンジェルと。②※【完】

2/21
前へ
/368ページ
次へ
 やあやあこんにちはだ。  俺、エンジェル。  全寮制男子校の高等部に通っているけれど、トモダチがほとんどいない。  そんな俺に少し前にできた二人目のトモダチを、たぬきちゃんという。  そして俺は、トモダチを大切にするエンジェルなのだ。  というわけで──昔の俺に少し似たたぬきちゃんのため、今日俺は大元らしい生徒会の人たちに、たぬきちゃんをいじめないでとお願いをしに行くことにした。 「今日はぽかぽかだ、ぽかぽかー」  暖かいお日様の光に笑みを浮かばせながら、てくてくと歩く。  本日は平日。  授業があるけれど、俺はトモダチを授業より大事にしている。それに俺の通うクラスでは毎日全員がそろうことがない。  授業中で人気のない道を歩きながら、フワフワ。  そうは言っても俺は生徒会の人たちの居場所を知らない。まぁそれは、風や野良ネコたちに聞いて行けばいいか。  馬鹿な俺のために狐さんが書き出してくれた生徒会の人たちの名前と役職が書かれた紙を、ポケットから取り出して見る。 〝昼間(ひるま) 太陽(たいよう)  会長 ロシアンブルーのネコ〟 〝咲乃(さくの) 後月(しづき)  副会長 血統書付のボルゾイ〟 〝平本(ひらもと) (よい)  書記 黒のラブラドールレトリーバー〟 〝小塚(おづか) 遊依(ゆうい)  会計 ゆるゆるのゴールデンハムスター〟 「おぉ……」  流石狐さん。  なんともわかりやすい説明だ。  今頃また屋上の給水タンクあたりで寝ているだろう狐さんを思う。  狐さんは俺が人間を区別するのが苦手だということをしっかり理解してくれている。嬉しい。流石一番のトモダチ。  浮かれた俺は、喜び勇んで歩みを進めた。  まずは会計くんだ。  小動物なのでお手軽そうだが、その実ハムスターは寒さに弱く扱いにくい。俺が早くあたためてあげなければ。  風の向くまま気の向くままに廊下を歩いていくと、目的はすぐに達成。  窓の外に飴ちゃんをくわえたハムスターを見つけた。  ほほう、中庭はあたたかいからだろう。  きんきらきんの金髪をふんわりと遊ばせいろんなアクセサリーをつけたハムたろー似の彼は、狐さんの言うとおり、見るからにゆるゆるのハムスターだ。  飴ちゃんをもごもごと口内で遊ばせて太陽の光に目を細めながらベンチに座る姿は、まさしく会計くん。  それじゃあ、会いに行こうか。  俺は窓をカラリと開けて飛び出した。 「ハムたろー」 「っ!? うえぇぇえ!?」  二階からピョーンと外へ飛び出してハムたろーのそばの草むらに着地すると、ハムたろーは驚愕で目を丸くしながら絶叫する。  着地成功なり、だ。  エンジェルの調子は良好。  俺は何事もなかったように立ち上がり、ハムたろーの隣に腰を落ち着けた。  こうして並ぶとハムたろーは俺より小さいが、たぬきちゃんよりは大きいみたいだ。  小さい生き物はかわいい。狐さんだってきっとそう言う。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1078人が本棚に入れています
本棚に追加