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「え? なに勝手に座っちゃってんの? てか誰なの? 不審者?」
「ん? エンジェルだぞ。空知 神とも言う」
「いや逆じゃん。……そのなんか白いルックスとか、目立ってんのにこっちじゃ見なかったけど……キミって特別棟の生徒?」
「ん、そうだ」
こくんと頷くと、ハムたろーはもう一度目を丸くした。目をまんまるにした顔はやっぱりハムスター似だ。
ちなみにハムたろーの言う特別棟というものは、確か狐さん曰わく、この学園の問題児を詰め込んでおくところである。
俺と狐さんの教室があるんだ。
大きな学園の敷地内に一棟だけあるそこは、一応ハムたろーたちの通う普通棟とくっついてはいる。
けれど俺が見る限り頑丈そうな扉で囲われていて鍵がかかっているため、こちらからは出られない仕様になっていた。
普通棟からは先生たちが出入りしなければいけないので、誰でも出入りはできるんだけどな。
友達なのか知り合いなのかはたまた面白半分なのか、実際、それなりに普通棟の生徒たちも出入りしている。
だからここの情報が入ってこなかったりはしない。現に狐さんはなかなかの情報通だ。
ちなみに、屋上までは流石に区切られていないぞ? 勝手に入ってきたたぬきちゃんがいい例だ。
しかしこっちにいるのは進級テストに落ちるようなバカかそうとう学園の厄介者か、なんにせよなにかしら問題がある生徒と決まっている。
なので普通棟の生徒たちは、基本的に俺たちを見下しているらしかった。
引用元は狐さんだ。
いつもバカにされる。
長くなったけれどそういうことで──俺はそんな特別棟の住人だ。
特別棟に入ることになった理由はわからないが、どうしてか尋ねると、狐さんはこっちでいいんだと言っていた。だからたぶんこれでいいのだ。うむうむ。
「へー、特別棟のねぇ……」
コクリと頷いた俺を見て、驚いたハムたろーはなんだか嫌な目で俺を見た。
あまり表には出ていないが、目はやっぱり正直だ。
俺は理由がわからなくても、そういう変化に敏感。
「じゃあキミバカなんだ」
「あぁ、一番頭が悪いぞ。テストは問題すら読めないこともある。言葉はあれそれ話せるんだが、読み書きは苦手」
「本当? 一番とかマジじゃん」
「うん……トモダチだって、この前ようやく二人になったところだからな」
しょんぼりと肩を落とす。
トモダチはやっぱりいっぱい欲しい。
バカだとトモダチが控えめかもと肩を丸くしてしょげかえっていると、ハムたろーはベンチを指先でトンとつついた。
「てかさ、キミなにしにきたの? いきなり窓から飛び降りたりして、特別棟にいるのって頭イカレてるから?」
「イカレてる? イカレてるってなんだ?」
「わかんないならいいよ。ほんと、なにしにきたのー?」
「おぉ、実はハムたろーにお願いがあってな」
なにしにきたのか、と尋ねられて、俺はポンと手を打った。
ようやく思い出したぞ。
すっかり忘れてたいた本題を、よもやその相手であるハムたろーに言われるとは。
俺はハムたろーにたぬきちゃんをいじめないでと言いに来たのだった。
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