狐と狸とエンジェルと。②※【完】

5/21
前へ
/368ページ
次へ
「いーい、おばか。強姦ってのは、キミのケツの穴に無理矢理ち✕こを突っ込んで好き勝手に犯すことなの。わかる? 男としてちょーやなことなの。や、まぁ女もやだけどさ」 「えぇっそんなことするのか? それはいやだ、やめてくれ」 「いや今更やめてとか言われましても。もーやる気ないんだけど」 「わあ、よくやめてくれた。ありがとう」 「いやいや感謝されましても。なにコイツちょー疲れる」  一生懸命理解して思ったとおりに答えたのに、はぁ、と深いため息を吐かれた。なぜだ。  ちょっと焦ってオロオロと狼狽する。  俺のひっそりとした目標のためだ。  まず第一にたぬきちゃんの話をして、いじめるのをやめてもらう。  そして第二は、俺とトモダチになってもらうことなのだ。嫌われてしまったら、トモダチになってもらえない。 「は?」 「よ、よーし」  あー、うー、としばらく唸って、俺はハムたろーの頭をよしよしとなでた。  ハムたろーが訝し気に睨むので、ビク、と肩を丸める。でも負けてはいけない。 「そんなにええと、しょげるな。やはりハムたろーはハムスターだから、寂しがり屋さんなのか? 強姦、は俺は苦手だが……ハムたろーがオトモダチになってくれるなら、まぁ、一回ぐらい、我慢する」  エンジェルは強い子なので、少しくらい強姦をされてもきっと大丈夫。  だから落ち込むな、という意味を込めたなでなでと言葉だったのだが、ハムたろーはきょとんと俺を見つめるだけだ。  そんなにじっと見られると照れる。  俺はあんまり人と関わるのは上手じゃないんだ。下手っぴなんだ。  人間という生き物は、なんだか複雑で、大変な生き物だから。  たぶん俺の感覚とは違うのだろう。  ハムたろーはいやだと言っていたが、もしかしたら強姦というものはやるほうは楽しいのかもしれない。それなら、ハムたろーが楽しんでほしい。  うんうんと頷いていると、ハムたろーはゆっくりと口を開いた。 「キミ……おれと友達になりたいの?」 「あぁ」 「んで、そのためにヤられんの?」 「一回だけだぞ、一回だけ。それ以上はちょっとやだ……」 「…………」  うーん、と悩む。  普通のえっちならいいんだ。気持ちいいし、恐くない。  だが強姦とやらは昔を思い出す。  あれはきっと強姦というものをされたのだ。とても嫌だった。ハイエナさんたちがガブガブと、出たり入ったり中が痛い。  しかし一度なら我慢できる。  頑張ればな。トモダチはいないよりいるほうがいいから、気に入った生き物はトモダチでいてほしい。  やっぱり一度ではだめなのだろうか、とシュンと眉を下げてハムたろーを伺うと、ハムたろーは急に「あははは!」と笑い出した。 「ん? んっ?」 「ばっばっかだねぇキミ! あはははは!」 「?? なぜ笑う? 一度じゃだめか? それとも俺とオトモダチはいやなのか……?」 「あははっ! んふふふ、違うよおばかちゃん」  ケラケラと笑うハムたろーは、もう嫌な目はしていない。  俺はわけがわからなくて頭上にハテナをいくつも浮かばせた。どうして笑われてしまったんだろう。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1078人が本棚に入れています
本棚に追加