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「あはっ、くくくっ……ねぇ、おれたち今会ったばっかだよね?」
「でも構わないぞ? 親しくなるには時間がいるかもしれないが、トモダチになりたいと思うのに時間は関係ないんじゃないかな」
「んふふ、そう? そうかな、そうか! キミみたいな幼稚園児バリのアホならそう考えるかぁ」
「アホ? 俺はアホなのか?」
「アホっしょ。バカでもマヌケでもいいけどとりあ独特ではあるよね。おれと出会っていきなし友達になりたいなんて言ってきたのは、キミが初めて」
「ん? ん、んんんー……わからない。でも、ハムたろーは俺のトモダチになってくれるのか?」
「ふはっ! いーよ。暇潰し程度にキミの友達やったげる」
「わあ、やった」
ニヤニヤと笑うハムたろーは猫や狐にも見えたが、やっぱり俺にはふこふこかわいいハムスターに見えた。
嬉しくってウキウキする。
ハムたろーは俺のトモダチ。
喜ぶ俺は機嫌よく浮かれてハムたろーに向き直り、そわそわポケットを漁る。
「ハムたろー」
「なぁに?」
「トモダチのしるしに、これをやる」
「なに? これ」
ハムたろーに差し出したのは、チャームの付いたチェーンブレスレットだ。
シャラ、と音が鳴った。
チェーンは捻れるようなデザインになっていて、長さの調節ができる。チャームはガラスのような玉の中に小さな羽根が入っているものだ。
俺のお手製なんだぞ。
頑張ってチマチマと作った。
自信作であるそれをハムたろーは受け取ると、首を傾げ、光に透かす。
「それは天使の涙に天使の羽根を入れてそれを依代に天使のパワーを凝縮した玉を、純銀のチェーンで繋いだブレスレットだ」
「はぁ? 天使? ……いや、あーはいはい。天使ね、天使」
「どうした? そんなに呆れた目をして」
「なんもないよ。続けて続けて」
「ならいいのかな。……これはハムたろーを助けてくれる」
「助けるの?」
俺は一つ頷く。
天使のブレスレット。これの効果は主に持ち主の守護だ。
理不尽に危害が加えられそうになれば防ぐし、病気になれば負担だけだが肩代わりする。疲れれば癒やして、精神的に傷つけばその痛みを和らげる。
ちょっとした幸せも運ぶのだな。
このブレスレットにもどうしようもない害がもたらされた時は俺に知らせる。
しるしが力を使えば、俺は感じるので危険がわかるぞ。トモダチが傷つくのはいやだからな。
昔は直接相手の安全を願って加護というものを与えていたりしたが、今は形にしないと〝ある〟ということを信じない。
人間というのは頭がいいので、なんでも深く考えてしまうからだ。
最近では奇跡の確率すら考え始める始末。理由がないと不安なのかもしれない。
それは理由を持たずに存在否定をされる俺や狐さんからすると、少し気になるものだ。素直に信じる気持ちに理由がいるだなんて。悲しいことだ。
人間とは、かわいそうなものだな。
そんな人間であるハムたろーは俺の説明を聞いてふーんと話半分に流すと、腕に着けて手を振った。
「ど? アクセサリーとして悪くないと思うけど」
「うん、かわいい」
「や、おれカッコイいってよく言われんだけどさ」
「ん? かわいいぞ」
「やや、おれそういうタイプじゃないからさぁー……」
「ハムたろーは、かわいい」
ぎゅ、と体を抱きしめながらそう言う俺に、ハムたろーはもういいよ、と言って少し赤い顔でへにゃりと笑った。
狐さん、見てるか?
トモダチ、三人目。ゲットだ。
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