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大晦日の今日。
俺はすごい夢を見た。
空飛ぶコッペパンにまたがって、空中戦闘機動を見事にこなしていたのだ。
迎え撃つ敵機はお年寄りに不人気なフランスパン。
ピッタリと後ろに張り付くやり手の操縦士との戦いは、熾烈を極めた。
急速旋回からの宙返りでどうにか撒こうとするものの、恐ろしい速度で追いすがるフランスパンはなんのその。
機体のスペックを活かしたハイ・ヨー・ヨーによりコッペパン操縦士の俺は追い詰められ、背筋がヒヤリと冷たくなる。
しかしそこは俺の愛するコッペパン。
上方背後を取られたのを見て、素早く機転を利かせ、ダイブアンドズームでロール回避。
見事、フランスパンを撒いて逃げおおせたのである。
ウィナー俺。
誇らしく拳を突き上げて凱旋した。なかなか爽快感のある夢で気分がいい。
さてさて。今日は出かける約束があるから、さっさと起きよう──
「ん……、っふ……?」
──と、したはずだったのだが。
目を覚ましても俺の視界は黒いままで、体がまともに動かなかった。
「はっ…ぁ……」
寝巻きがはだけたのか、下半身が寒くて身震いする。
寝返りを打とうにもなぜか腕が持ち上がらない。体が弛緩しきっているらしく、指先を動かすのも難儀だ。
「? ……っぉ」
ふと、腹の中で自分のものじゃないなにかが、グチュリと蠢いた。
太く長く熱いなにかだ。
体感、それがどうもケツに捩じ込まれている。たぶん。
でも俺は動けないので、そのなにかが好き放題ヌポヌポと俺の尻を出入りしているらしい。
ようわからん。だってなんか、やたら意識がハッキリしねんだぜ。
(ほげ……揺れてるぜ……ぱんぱん、ぐちぐちって、変な音……)
「……、……? ……?」
わからないままぼんやり霞む目を白黒パチパチと瞬かせ、天井を見つめて生来スローな思考を巡らせる。
腰を掴んで押さえ込む誰か。
揺さぶられ、貫かれるカラダ。
ゆっくり深々と挿れては抜かれ、ギシッ…ギシッ…とベッドが軋む。
腹筋を裏側から突き上げられたからか、へそのくぼみに溜まっていた生暖かい液体がシーツに向かってトロリと脇腹を伝った。青臭いし汗臭いぜ。
膨れたしこりを押し上げるように擦りつけるモノが、酷く馴染む。
首は動かず体は起こせないままでなにも見えない。確認はできないが、妙に気持ちいいことは確かだ。
全身しっかりトロットロ。
空手部の試合で高ぶった時に何度も自慰をしてイッたあとくらいの解放感。
あぁ俺、戦うと興奮すんだ。夢で戦ってたからか? 夢精しまくったのかも……っていやいや俺はさっき目覚めたはずなんだぜ。たぶん現実だと思うけども。
「……おかしくね……」
「──起きたのか? エビ……海老名」
なにもわからないままに与えられる快感を感受していると、思いもよらず、聴き慣れた声が返事をした。
年齢よりずっと落ち着いた少しかすれ気味のバリトンボイス。
耳に唇を近づけて話すのが癖らしく、いつも囁くように優しく語りかけるこの声は──蟹喜多先輩の声だ。
カニ先輩は、俺が一番尊敬する先輩である。
物静かな大人っぽい人で、声を荒らげた姿を見たことがない。
俺が困っているとどこにいようがいつでも現れて「どうした? エビ」と笑顔で声をかけてくれる。
そんな頼れるカニ先輩が、どうして俺の部屋にいるんだろう。
不思議に思って返事を渋っていると、先輩はいつものようにクククと笑って、耳に口元を近づける気配を感じた。
「エビ。これはな、夢だぜ。俺に犯される、ただの夢」
「ンっ……」
ベロ、と耳の孔をヌメった舌が舐め、そのまま奥へと侵入する。
思わずビクリと体を跳ねさせると、遠慮がちに動いていた胎内のモノが、大胆な動きで俺を穿ち始めた。
なんだ。俺は先輩に犯されるただの夢を見ているだけだったのか。
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