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「ぜんぶ、まだ夢、す……?」
「そう、夢だ。だってエビ、今目の前が真っ暗だろう? 夢じゃないなら朝のはずで、朝は真っ暗じゃない……な?」
「んふ……ホントだ、そ、っすね……はぁ……っふ、くすぐって……」
優しい声で説明される。
言われてみれば納得だった。
実際の俺が眠っているなら、体が動かないのも視界が暗いのも理屈が合う。しかしこう、マグロのままってのも申し訳ないような気が。
「はっ……意識があるほうが、締まる」
「あ、……っ、……っひ」
ただ寝そべることしかできない俺の中を、先輩は叱ることなく、むしろ丁寧にねっとりと犯した。
耳の中、外耳道の産毛を愛撫するように動く舌によって、ヌチュッ、ニュル、と粘着質な音が篭って聞こえる。
それと同時にもう一方の手が俺の頭を挟むように抱いて、もう片方の耳の孔をクリクリと指先で遊びだす。
「ぁ…っぁ…っ」
──先輩……耳の中、そんなことされたら、変な気分になる、ス。
タンタンと突き上げられながら揺れる腹の上で震えていた陰茎が、勃起しているのが自分でもわかった。
背筋がクンと微かに仰け反り、晒した喉がヒクヒクと震えて喘ぐ。
先輩は嘘を吐かないのでこれは確かに夢なはずなのに、俺は先輩に耳の孔を触られて、舐めてもらって、犯してもらって、感じているのだ。
ズクン、と胸が痛む。
罪悪感が凄い。ああ先輩、不埒な俺を許してほしいスよ。
心の中では謝って、夢の中では先輩が与える快感に耽る淫らな体。溢れる淫液と、むせ返るような生臭い精の香り。
やっぱりリアルだ。
でも夢なんだ。
大好きな先輩とア✕ルセックスをしてハァハァと興奮する趣味なんてなかったはずで、想像すらしたことねぇけど、間違いなく俺が見ている夢なんだぞ。
「ふ……先輩……俺、スケベですみません、ス……は、っ……」
あんまり申し訳なくて、ジワ、と目玉の表面が滲んでしまった。
今までしたいやらしいことの中で、一番感じているのだ。
先輩に顔向けできなくて、俺を深く奥まで貫きながら肌を舐めて愛撫する幻想の先輩に、泣き出しそうな声で謝る。
「なんでこんな、気持ちぃんだ……? わかんね、ぅ…っく……ふっ…っ」
「あぁ……それでいいんだ。そうなるようにしたんだから、それで正しい。エビはちゃんといいこだよ」
けれど先輩は嬉しげにクククと笑って、やっぱり叱ることなく「イイコ、イイコだ」と頭をなでてくれた。
夢の中でもカニ先輩は優しい。
安定の大好きだ。尊敬している。人として愛している。流石カニ先輩。
そんな先輩を俺の夢で汚してしまったなんて罪悪感に苛まれるが、本人(夢)がいいと言ってくれたんだ。あまり気にせず身を任せよう。気持ちいいしな。
「ア、っ……せんぱい、嬉しいス……あっ、ンふっ……」
「クク……そうか。ならたくさん声を出して、感じて、イッて、エビのやらしい姿を俺だけに見せてくれ」
「ンぃ…っぃ、あ゙……っ」
ピクリとも動かせない体を突き上げられながら、俺はニヘァ、と先輩がいるだろう方向に笑ってみせた。
──それから何度もイカされて、先輩は何度も俺を犯していた。
視力を奪われたせいかどこを触られても過敏に反応してしまい、汗を滲ませて痙攣することしかできない。
狭い排泄器官が裂けることなく立派なモノを呑み込むワケも、もちろん先輩。
先輩は俺が苦痛を感じないよう、ここを穿たれると奥を開いてそれを包み込むように、ひっそりと夜毎躾てくれていたらしい。
おー、と感心する。
夢とはいえ綿密な計画だ。
先輩は俺の性感帯や弱いところを熟知していて、痛みとは無縁の暗闇の中、体中に先輩の感触を刻みつけられた。
わかりやすい印をつけられないことに落胆していたけれど、それは夢だから仕方がない。
うーん……歯型とキスマークは、わかりやすくないのか?
そもそもなんの印かわかんね。
「ヒッ……あぁ、ぁ……」
もう何度目かの精を体内で受け止めながら、釣られてピシャリと色のない蜜を漏らしてイク。
薄れゆく意識の中。
先輩は俺の口端から垂れていた唾液をすすって舌なめずりすると、満足げにチュ、とキスをした。
「年が明けることに、実はあまり興味がないんだ。だけど冬休み前、友人が年明けの瞬間は好きな人と過ごすんだ、と言っていた。一般的に、一年の始まりは特別な日らしい」
「だから俺は、一年の始まりはお前の中から産まれて始まろう、と思って」
──おう? おう。おうぅ。
なんにせよ、これはなかなかイイ一年の始まりだと思う。
夢の中なのに薄れゆく意識の中で聞こえた先輩の言葉は、後半がモヤがかって聞き取れない。
でも俺も年末年始なんてものにはしゃぐタイプではないので、ちょっと嬉しくなり「先輩も俺と同じタイプスね」とテレパシーを送っておいた。
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