カニ先輩の言うことは絶対※【完】

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  ◇ ◇ ◇  キラキラと雪を反射して眩しい朝日により強制的に覚醒させられた今日は、お待ちかねの元旦である。  なんだか凄い夢を見たなぁ……なんて思いながら起き上がり、やけに疲労しきった体を駆使して着替えを済ませる。  パジャマを脱ぐと体中に赤い発疹と妙な歯型がついていて、ちょっとびっくりした。  まああれは夢だから、これはきっとダニかなにかだと思うが。  出かける前にシーツを交換して、シュッシュとファブっておく。  シーツからなんだかいやらしい匂いがしたのも恥ずかしいぜ。  やっぱり夢精してたんだろうよ。  全身の肌も下着の中も綺麗だったし未遂だったと思っていたのに、高一の男なんてまだまだ若いもんよな。  片親の俺は、仕事人間な父と二人暮らしだ。  リビングでいつもと変わらずニュースを見ながら新聞を読んでいる父に、おはよう、あとあけましておめでとう、と挨拶をして、丁重にお年玉を賜る。  謎の肉体的疲労も飛び散るくらい浮かれて、俺は朝食に昨日煮ておいた黒豆を食べた。  おせちは作らないけれど、俺たち父子は黒豆が好きなのだ。  それからシャワーを浴びて、寝汗で湿った体を清める。  バスチェアに座って頭を洗っているとケツの穴からドロリと白濁した粘液が出てきて、流石の俺も思いっきり焦ってしまった。  なにかの病気かと思ったぜ。  心当たりはねーぞ。  中学の頃から空手部に所属し趣味が筋トレと運動である俺は、凍える冬でも病気にかかったことなんてなかったはず。  しばらく悩ましく思ったものの、初詣の約束をしているのを思い出して、とりあえず忘れることにした。  割かし怠惰に眠っていたため、急いで用意をして待ち合わせ場所の神社へ向かうべく「行ってくる」と父に声をかけて玄関を飛び出す。が。 「あけましておめでとう、エビ」  すぐに脚を止めた俺は、ポカン、とマヌケ面で静止した。  待ち合わせの相手──カニ先輩が、すでに家の前にいたからだ。 「カニ先輩、あけおめッス」  ペコリと頭を下げて挨拶を返し、門を閉めてカニ先輩の元へ駆け寄る。  背が高いと言われる俺よりもさらに背が高い先輩は、硬派なイケメン。顔もやたらと整っているので、立ち姿が様になる。相変わらず指先までかっこいい。  ──でも約束の時間まで、まだ……三十分もあるよな?  集合場所だって現地にしたのに、待ちくたびれたわけでもないならどうして迎えに来てくれたんだろう。  ちなみに住所を教えた記憶もない。  カニ先輩だからシックスセンスとか使ったのかもしんね。スゲェ。  うんうんと一人納得して、疑問はどこかに押しやった。  カニ先輩は俺がピンチの時に、どこからともなく現れて絶対助けてくれる。  いや本当にどこにいてもひょっこりと。勘がいいのかもしんないな。ほらシックスセンスだろ?  何度も助けられた俺は、カニ先輩の言うことだけは無条件で信じるぜ。
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