悪人正直者【完】

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 10月28日 PM07:31  一時間近くなんやかんやと騒いでいると、俺のスマホが突然着信を告げた。 「誰だ」 『画面確認してから出なさいって。深瀬だよ』 「そうか。俺は村田だ」 『知ってるっての。じゃなくて、晩メシできたからいったん帰ってこいよ』 「おお……そうか、じゃあもう帰る」 『よし。ちなみにグラタンな。食べたらアジトに戻るか?』 「いや、家にいる。お前も今日は泊まるだろう? 泊まれ」 『お、おう……じゃあほら、明日は一緒に登校しようぜ』 「あぁ。少し待ってろ。すぐ帰る」 『あいよ。気ぃつけてな』 「わかった。安全運転で爆走しよう」 『気ぃつけるんだよな……?』  相手は深瀬だった。  心配性な深瀬からの通話を切って、ポケットに突っ込む。  フフン、いい男だろう?  流石深瀬。グラタンはチーズを多めにしてくれているだろうか……。  ソファーに無造作に置いていた上着を着て帰るべく立ち上がると、仲間たちがわらわらと群がってきた。 「あー? もう帰んの?」 「まだこんな時間だぜ?」 「ああ。飯ができているそうだ。グラタンだ。たぶんチーズも多めだ」 「グラタンなら仕方ねェ」 「意味わからんよリーダー」 「村田、今のってもしかして深瀬?」 「そうだが」 「マジか」 「なんぞ?」 「もう嫁じゃねぇか」 「え、飯作ってもらってんの?」 「つか料理できんのか」 「ふふん。貴重な料理のできる男子高校生なのだ。深瀬のご両親は週数日帰りが遅いので、お付き合いしてから暇があれば作ってもらっている」 「おお! 奥さんか!」 「奥さんだ、奥さん」 「でも掘ってる側だぞ?」 「旦那さんか……」 「ややこしいな」 「じゃあ奥旦那さんだ」 「なげぇよ」 「呼びにくい」 「要約して深瀬でいんじゃね?」 「だな」 「リーダーどう?」 「深瀬でファイナルアンサーな」 「「「おう」」」 「そう伝えておこう」 「頼むわ」  10月28日 PM08:11  ──村田家。 「お前のこと、そういう経緯で深瀬って呼ぶらしいぞ」 「…………そっか」  了
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