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「寒ぃ…。」
思わずそう独りごちた。
ぶるりと身を震わせ、袂へ腕をしまい込む。
吐く息は白く、天からは雪が落ちてきている。
それが衣を濡らすのを見れば、自ずと足が急いた。
全く…、何が楽しいんだか。
寒いから、と言う理由で始まったはずの飲みは
正月が近い、やれめでたいと理由を変え、いつの間にか大掛かりな会となった。
無論、その中心は三馬鹿だ。当初は数名の予定だったものがいつの間にか鬼の副長を巻き込み、ひいては局長公認の会となった。
そこまではいい。酒の席は嫌いではない。
問題はその後だ。
3つ目の店だったか…。
知らぬ間に隣に座っていた女たち。
誰が呼んだのか知らないが、いったいどこから金が出るのか。
ねっとりと絡みつく腕。鼻につく白粉のにおい。
あろうことか褥にまで誘われて普通の男なら首を縦に振るだろうその時に、さも誘いに乗るフリをして逃げ出してきた。
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