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怖い。恐ろしい。そんな感情ばかりが胸を渦巻いてぐしゃぐしゃになっていた。 もう長い時間泣いているせいか重たい頭が鈍く痛み、濡れ切った顔に流れる涙は冷え切っていた。喉は枯れても嗚咽は止まらず、濁流のように押し寄せる感情を落ち着ける事などできそうになかった。 そんな中で唯一縋りつけるのは全てを理解して頭を撫でてくれる優しい手と、頭を置いた膝の感触で、涙がその膝すらぐっしょりと濡らしているのだと理解していても、どうしても手放せそうにはない。 許されている事を理解しているから尚更、僕の臆病な心は縋りついてしまうばかりだった。 「大丈夫だよ陸。郁也が運命を見つけても何も変わらない。郁也は陸を愛しているよ。それ以上に私が陸を愛しているじゃないか。陸はわかるだろう?」 兄様と同様に歳の離れた優しい幼馴染の風宮彰(かぜみやあきら)のその言葉が、僕が耳を傾けられる程には落ち着いたタイミングを狙って掛けられたものだと理解していた。 褒めてくれるのは兄様も同じくらいでも、今みたいに泣く僕の事を優しく慰めてくれるのは幼馴染の彰の方が多かった。 優しい兄様に心配を掛けたくないという気持ちもあって兄様には弱っている姿を見せたくないのと、兄様以上に僕の機微に幼馴染が敏いのもあった。いくら隠しても容易くバレてしまうのだ。 僕は彰に隠し事ができない。 「兄様の……っ、兄様が運命の人を見つけた事を悲しく思ってるわけじゃないんだ。でも、寂しくて……それでなくても僕は出来が悪いのに、兄様みたいに運命の人が見つけられなかったら幸せになれなくて……怖いんだ」 涙が激しく溢れて、嗚咽が響く。込み上げる震えに堪らず、飛び起きて彰に縋りつくように抱き着いた。彰もすぐに僕を強く抱きしめ返してくれる。
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