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「心配してたんだ。兄様は食事を疎かにしてしまうから、倒れたりしてないかって」 本来言おうとした言葉は変わっても本心だった。兄様は完璧な人だが、一つだけ問題があった。 昔から一人だと食事を疎かにしてしまうのだ。それが立場による責任への真摯な姿勢ゆえの犠牲のようなものだと理解しているが、心配事には変わりない。 『ありがとう。大丈夫だ。体調管理は出来ている。陸も変わりないか?』 声だけでなく兄様は優しい。感極まるあまり身体が熱くなっていた。 「うん、僕も大丈夫。ねえ、兄様。もう少しで会えるね。父様の誕生日も勿論だけど、兄様に会えるのを楽しみにしてるよ」 一月後に井坂グループの総裁である僕達の父様の誕生日パーティーを一族総出で祝う事になっていた。二日間掛けて井坂グループの系列ホテルを貸し切り盛大に祝われ、一日目は親族のみで、二日目は関わりのある企業も出席する。 『その事なんだが』 一瞬の間の末、返ってきた真剣な声に胸がドキリとした。嫌な予感がして、鼓動が速くなる。 一度も欠席した事がない兄様の事だから可能性は低いとは思うが、もしや出席できないのと嫌な予感が脳裏を過る。
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