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スマホを持って離席しようとすると、
「はい!」
岡田さんから、何か手渡された。
見ると、カカオ含有率高めのチョコレートの小分け数個。
「こういう時は、コーヒーだけより何か口に入れた方が良いから。」
「…有り難うございます。」
岡田さんと仕事して分かった事がある。
彼女は、気遣いが然り気無く出来る人だ。
このチョコは、彼女の好みでは無かったハズだ。どちらかと言うと、俺好み。
彼女はよく、酒が弱く甘い物好きの駒井とスイーツ談議をしている。
「あそこの店、季節限定だしてるよ」だの
「これ、数量限定なんだよ」とか
以前、駒井が強引に
「疲れた時は、ガツンとした甘さが欲しいっすよね~」
と岡田さんと駒井がイチオシのプリンを一口くれたが、二人の甘味レベルは俺の許容範囲を振り切ってた。
俺がブレイクタイムや残業中、口に入れるのは専らナッツバーや、この高カカオチョコ…
休憩所で、頂いたチョコと自販機のコーヒーを、少しゆっくり味わった。
岡田さんには、独自のアンテナがある。
俺は、仕事では堅実なアプローチをする方だ。それが新規の顧客には、好感を得る場合もあるが、付き合いが長い取引先からは、目新しさを求められる事もある。
そういった場合、岡田さんに頼んだ資料プラス、面白い切り口の提案がメモられてる。
詳しく聞くと、
「あそこの会社の商品、最近、今までと違う客層にウケてるみたいなので。」
「只、しっかりしたリサーチをした訳じゃないから…」
と、ガツガツ前に出ないが、確実に俺に足りない部分を補ってくれる。最良の営業補佐。
そんな業務上、有り難い存在の彼女を最近、簡単に剥ける。
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