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自惚れて、脈アリと思っていた。
長いこと、まわりの視線を感じてきた経験から、その人が人として好意を持っているのか、それ以上を俺に求めているのか判別つくのだ。
特に異性は、分かりやすかった。
私に釣り合うのは、貴方くらいイケメンじゃないとね、という風な上から目線のタイプ。
後、俺の容貌に緊張して友達としてポジションのまま、あわよくば彼女に昇格したいという様な、こっそりタイプ。
正直、岡田さんは後者だと思っていた。
「何で、ですか?
俺が年下だから?同僚だから?」
俺が勢い込んで訊ねると、真面目な顔のまま
「北野さん、自分の顔面偏差値の高さ、自覚あるよね?」
「まあ、はい。」
「私も北野さんの顔、好きだよ。
でも、それはアイドルを追っかけてるのと変わらない感情だと思う。」
はあ~ここまできて、アイドル?
中身を評価してくれたのではないのか!?
「自分の推しキャラが活躍してる、○○くん頑張って~!って黄色い声あげるね。多くの女性にとってイケメンは癒しだよ。でもね」
そこで彼女は、顔を赤らめ
「アイドル相手に性的な想像出来ない。」
え?俺、貴女とセックス出来てますよ、まだ頭の中だけど。
「アイドルに妄想してる人、多いと思いますよ。」
拗ねた様に口答えすると、
「う~ん、男と女の違いかな?
何より私は出来ない。神聖な癒しに対して冒涜!無理!」
遂には、神扱いか。
「じゃあ言いますが、俺の親父、今はバーコード頭ですよ。母も、すっかり中年おばさんだし。
人間、遺伝子や重力には勝てないんです。
そう言えば安心して、付き合えます?
岡田さんは、一時の表面で、相手を判断するんですか?」
意地の悪い言い方をした。
二人の間のテーブルの上で、カランと氷の溶ける音がした。
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