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社会人になると、自分の努力が比較的分かりやすい営業職を希望した。 新人の時から、だいぶ経ち、自分の努力以外で決まる事も、多々あるのだと。 それが自分の容姿だったりが、相手を動かすキッカケになるのだと、幾つかの取引先との商談で経験した。 勿論、準備の段階でマーケティングや様々なリサーチをし、相手のニーズに合わせた数種類のパターンを提示する、営業として当たり前の努力は常々している。 だが無理目の取引先に、自分が駆り出され決まった契約は大体、担当者が異性だ。 すると契約後、周囲から聞こえてくる声がある。 『あいつは顔が良いからな』 まるで努力を怠って、容姿だけで契約を取った様な謂われ。 正当な評価をして欲しいし、心外だからといって怒ってみてもしょうもないので、無表情にスルー。 ただ、酒は強くなった。 営業は酒が強かった方が有利な事もあるが、そんな漏れ聞こえてくる中傷のストレス発散的要因も否めない。 親から受け継いだ先天的な要素に、文句を言う気にもならないが、時々澱が溜まる。 女性関係にしたって、そうだ。 俺の容姿からイメージを膨らませ、性格を勝手に想像して、やってきては 『もっと遊んでるかと、思った』 曰く、面白味がない 『王子様っぽいのに』 曰く、尽くしてくれない と、離れてく。 俺だって人並みの感情はある。 自分から好意を寄せた訳ではないが、やってきた相手に少しでも気を許し、素を出し、そういった反応が度重なると、凹む。 だから恋愛に対するバリヤーが厚くなる。 たまにおこる性的欲求も、自分で処理すれば良いかなと。 合コンの誘いは尽きないが、自分から行動する気がおきない。 職場の男性陣だけで飲みに行った際、上司が色恋話を振るので、現状ありのままを話したら、大袈裟に驚かれ、可哀相な目で見られた。
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