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「…あのさ。何でボクこんなに叩かれなきゃならないわけ?」  私は焚き火近くで裸一色の体を寒さから守りながら、何度もスライムを杖で殴打する。着ていた服は上下、下着共にスライムのせいでぐちょぐちょに濡れており、とても着ていられる状態じゃなかった。意識を取り戻した時にはすでに辺りは夜の闇に包まれており、川の水で洗った衣服を焚き火が温かなオレンジ色に照らしている。そんな温もりが辺りを包む中、私は積年の恨みを晴らすかの様に険しい表情で元凶に当たり散らす。 「ねぇってば」「うるさい!! あんなことをしておいて今更しらを切るつもり!? 魔力ほとんど残ってないじゃないの!! 根こそぎ吸い尽くしてっ!! こんなの!! 契約違反…でしょうが!!」  ぜぇぜぇと息を漏らしながら契約元を撲殺しようと何往復も殴り付ける。ゲル状のスライムに物理攻撃をしたところで沼に杭だが、それでも私は怒りが収まらず殴り続ける。とはいえ魔法使いの私に武器を振り続けるだけの体力がある訳がなく、しばらくもしない内に腕が杖の重さに耐えられなくなる。疲れきった私はその重さに釣られるかの様に息絶え絶えに地べたへと座り込んでしまう。 「別にそんなに怒らなくてもいいじゃないか。ボクと違って魔力無くなったからって死ぬ訳じゃないんだし。」 「死ななきゃいいとか、そういう問題じゃない!! これじゃほとんどの魔法が使えないじゃない!! これからドラゴンを相手するっていうのにどうするのよ!!」  元々が低消費量の補助魔法なら可能かもしれないけど、攻撃魔法はとてもじゃないけど連発はできそうにない。見習いの魔法使いでも使える様な低レベルな魔法だけで、あのドラゴンの巣に行くなんて自殺行為に等しい。でも奪われた魔力はどんなに願っても主の元に戻ることは無いし、どれだけ怒りをぶつけてもこいつから力が返ってくることは無い。一連の行為が無駄だと悟ると私は何度も深呼吸をして、荒む心を落ち着かせる。
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