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 重力に負けそうな程重苦しくヨタヨタと歩く私をよそに、火の粉で明滅する上空では巨大なドラゴン達がその大きな翼を一面に広げて飛び交っている。巣の近くに侵入者がいるというのに、彼らはこちらを全く意に介さず悠然と飛び回る。単純に視力があまり良くないのか、小さい蟻が一匹いようがどうということはないのか、理由は分からないけどこちらとしても好都合だ。 「分かっているとは思うけど、警備が手薄な卵を選びなよ? 卵を取ったら一斉に襲いかかってくるだろうからね。」 「一斉に? 襲ってくるのは親だけじゃないの?」 「余所の子ならどうなろうが関係ないっていう考え方は、キミ達ニンゲンの悪い所だね。この世に芽生えたひとつの命には変わりないんだから、一丸となって守るのは当然のことさ。」  子を儲けたことがない私にはいまいちピンと来ない話だったが、要は彼らの態度はやれるものならやってみろという表れということか。上級魔法を使えない身とはいえ随分舐められたものだ。一寸の虫にも五分の魂という諺をすぐにでもお見舞いしてやる。  やっとの想いで卵の在処まで辿り着くも、どこもかしこも親であろうドラゴンに厳重に守られている。流石にここまで来るとドラゴン達も警戒を強め、唸り声を上げたり、空に向かって火を吐いたりして威嚇してくる様になってきた。当然この卵達には手をつけず、こんな状況下でも放置されている都合のいい卵を探し回る。  地獄の中を息絶え絶えで歩き回った末に、ようやく目当ての物が見つかった。何の因果かエメラルドの様な光沢を放つそれは、他の卵と違って近くに親が付いておらず、かつ他のドラゴンの巣から離れている所にポツンと置かれていた。先程までとは異様な光景を前にして、私はある種の自責の念を抱くも、すぐに気のせいだと心の中で呟いてこれ以上思い返さない様に努める。あれが何であれ、今はここから持ち去ることが先決だ。  私は(ふもと)側へ向かって歩き、一旦卵から遠ざかる。いくら巣から離れているとはいえ、スライムが言うことが本当なら採った瞬間に丸焦げにしようとこちらに向かってくるだろう。もしそうなったら逃げ切れる確率は限りなくゼロに近い。生存確率を上げるためにはなるべく巣から遠いところから、気付かれない様に卵を採らなければならない。そして魔法使いの私にはそのどちらも成せる技がある。  私は全身を隠せる岩影に隠れて、杖先を卵に向けて詠唱を始める。いつもだったら詠唱無しですぐに発動できる初級魔法なのに、どこぞの誰かのせいでいつもの数倍もの時間をかけてしまう。やっとの想いで発動した浮遊魔法により卵は地表から離れ、ゆっくりとこちらに向かってくる。地面すれすれの高さで動かしているので、幸いなことにドラゴン達にも気がついていない。後は集中して… 「へぇー凄い。よくこんなこと思い付くね。」 「んんっ!! ちょっと!! 集中してるんだから黙ってー」  しまった!!  急に話しかけてくるものだから、思わず感じてしまい集中が途切れてしまった!!魔法が解けた卵が地面に落ちていき…
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