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我ながら間抜けなことをやっていると恐怖心の中後悔する。相手はスライムとは違う、野生の魔物だ。人間の言葉なんか伝わるはずがない。誇り高き冒険者の欠片も感じさせない、みっともないことを最後にしてしまった。
痛みを感じることすらできない業火に焼かれるのを覚悟したけど、私に待っていたのは生暖かくこそばゆい舌の感触だった。腕の中に収まる赤子の舌が、服の上から私の胸の膨らみをチロチロと集中的に舐め始める。
「ちょっ。こんな時に、止め…や、あはは!! くすぐったいたら!!」
あまりに擽ったいその攻め苦に、危機的状況に関わらず膝を折って笑い転げてしまう。熱すぎる地面で火傷しそうになり、すぐに反射で飛び上がるも、赤ちゃんドラゴンはまるで乳を欲しがるかの様に服の合間を縫って、奥に隠れる乳房へと舌を這わせるのを止めない。恥態を晒す私に呆れたのか、無事に産まれた赤ん坊もろとも私を殺すことができないからなのか、集まっていたドラゴン達は何事もなかったかの様に私達の元から次々と去っていく。
「何かよく分からないけど、助かったみたいだね。ボク達…ねぇ、聞こえてる?」
奇跡的な生還を遂げた事実を喜ぶ暇もなく、私は目先のか弱き者によるじゃれつきを抑えるのに必死だった。決して鋭くはない四肢の爪がケープ越しに食い込み、体力の消耗も相まって引き剥がすことができない。その間も乳飲み子は栄養を寄越せと攻め立てる。
「…分かった。分かったから。せめて場所を移動させて。このままここにいたら熱さで死んじゃうわ。」
外では幼きドラゴンを、中では肥大したスライムの核を抱えながら私はヨタヨタと楽園へと歩を進めていく。辿り着いた先で極上のエクスタシーに身悶えするのを承知の上で、何故か腕の中で艶やかに蠢く小さな命を溢すまいと抱えていた。
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