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「例の依頼の件、討伐完了しました。」 「おぉ、本当にありがとうございました。何か、爆発する魔法でしょうか。山の方から狼煙(のろし)の様な煙が上がるのが見えました。まさか宣言通りこんな若い女手ひとつで奴らを滅ぼしてくれるとは…いやはや恐れ入りました。」 「…報酬を受け取りたいのですが?」  依頼主…この村の長だろうか…は、私の素っ気ない態度に少し不機嫌な顔をしつつも「しばしお待ちを。」と言って裏に引っ込む。その態度から、やはりこの男も女一人で何ができると思っていたことが伺える。いつもそうだ。いくら実力があっても見た目で他のスレイヤーと色眼鏡にかけられる。不愉快ではあるけど一々気にしてたら身が持たない。報酬を貰ってさっさと出よう、こんなド田舎。 「お待たせしました。報酬の品です。」  私は報酬品が入った箱に杖を当てて透視の呪文を唱える。頭の中で中身のイメージが浮かび上がり、何も問題が無いことを確認する。依頼主によっては女一人なのをいいことに罠を仕掛けて、あわよくばその体を、なんて思っている下衆もいる。とりわけ魔法使いは一般人から特別視されており、名器を持っているだの抱いたらステイタスになるだの色のある噂をされがちだ。そういうこともあって、この人が例え善人でもそんな失礼な奴らとは一切信用せず、依頼以外の関係を持たないのが私の中では常識となっている。  一瞬例のドラゴンのことを聞こうか悩んだが、すぐに考えを改める。余計な話をすれば余計な依頼が来て、無駄な縁ができる。些か信じがたいけど、向こうが何も尋ねてこないということはあのドラゴンは重要な案件じゃなかったということだろう。  私は箱を開けて報酬を取り出し、「それでは。」と簡潔な挨拶をしてその場を後にしようとする。しかしあと一歩で部屋から出れる所で、向こうから大慌ててでやってくる村人達に道を阻まれる。 「そ、村長!! 大変、大変だ!! すぐに川まで来てくれねぇか!?」 「何だ? 一体何事だそんなに慌てて?」 「そ、それが神龍様の翼が川岸に流れ着いてんだ!! 川も血で真っ赤に染まってて…とにかく来てくれよ!!」 「何だと!! すぐに行こう!! …済まんが一緒に来てくれんか!?」  今の会話だけでもすごく嫌な予感がする。思い当たる節がありすぎる。断ってでもすぐに逃げた方が懸命だけど、パニックになっている村人達が故意か不本意か私を逃がさない様に行く手を塞いでいる。私はやむを得ず村長のお願いを承諾し、川まで同行することにした。
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