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 川岸の光景を一目見て私は酷く後悔を覚える。村人達が野次馬のごとくたむろしている真ん中には、先程私が切り落としたドラゴンの翼があった。まさかあれが神龍…土地神として崇められているドラゴンだったなんて思いも依らなかった。言い訳が許されるのであれば、あんな鎖ひとつも付けない野放し状態でよく神龍等と崇めることができるなと思うけど、それはとてもじゃないが口には出せない。 「おぉ、なんということだ。この川の染まり具合…恐らくもう生きてはいまい。一体誰がこんなことを…」 「…一体さっきから何の話をしているんです? 何ですかその神龍というのは?」  私は白々しく村長に尋ねる。当たり前だ。神龍を殺した者にはそれ相応の罰、死罪が下されるというのはスレイヤーでは常識だ。正直に白状すれば慰み者にされた後、無惨に殺されるのは火を見るより明らかだ。誠意からやったことなのに、そのせいで死ぬなんてごめんだ。 「あぁ、説明しておりませんでしたな。あの翼は我等をお守り下さる神龍のものなのです。見た者を虜にする、それはそれは綺麗な緑色をしたドラゴンでしてな…」 「そんなこと余所者に話している場合じゃないだろ村長!! 神龍が…この土地の守り神が死んじまったんだ!! この村は終わりだ!!」 「その女が怪しいぞぉ!! 凄く腕が立つと聞いたし、この辺で神龍様を殺せる奴はそいつ以外誰一人としていねぇ!! さてはさっき山から上がった煙は神龍様を殺した時のものだな!! 正直に吐けこの大罪人が!!」 「何をいきなり、きゃあっ!!」  激昂した村人がいきなり襲いかかってくる。身構える隙もなく頬を思いっきりひっぱたかれるものだから、怯んで体勢を崩してしまう。尻餅をついた私を村人達は殺れ、犯せ、辱しめろだの叫んで一斉にこちらを袋叩きにしようと集まってくる。 「やめい!! 止めんか!! 皆して何をやっているのだ!! まだその方が犯人と決まった訳では無いだろう!! ほれ、さっさと離れんか!!」 「だ、だがよ村長!! どう考えてももこいつしか」「離れろと言ってるのが分からんのか!!」  村長の怒号を浴びせられた男は手にかけていた私の襟首を少しずつ放し、くそっと悪態をつきながら地面に唾を吐いて私から離れていく。私は乱れた襟を正すも、心の中では男の急所を蹴り潰したい気持ちで一杯だった。
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