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「大変失礼しました。お詫びの言葉もない…だが皆の言う通り、我等を導いてくれた神龍様が殺された以上、我々はその大罪人に仇討ちせねばならない。そうしなければ我等は神からのお許しを受けることができないのだ。」
「皆まで言わなくても大体分かるわよ…私は殺してなんかいない。そもそもそんなドラゴンがいることすら私は知らなかったのよ? 仮に出会っていたとしても、一人でドラゴンに挑もうなんて返り討ちにされるのがオチよ。」
嘘で塗り固めた言い訳だと悟られぬ様に、私は淡々と事実を述べる。人間一人ではドラゴンに到底敵うはずがない、ということが常識で本当に良かった。村長は「確かに…」と私の説得に納得してくれているが、他の村人は何がなんでも私を罪人にしようと耳を貸す素振りすら見えない。これでは村長としては立場上、所謂『民意』とやらの力に賛同する他ないだろう。このままでは埒が明かないと思った私はひとつ提案を持ちかけることを決める。
「…分かったわ。私がその罪人とやらをここまで捕まえてくるわ。まだこの辺をうろついているかもしれないし、それで満足でしょう?」
「ふむ…我等の掟では四日目の朝日が昇る前に罪人を裁くか、供物を捧げれば許されると伝わっている。それまでに罪人を捕まえられなければ…」
「一番疑わしい私を殺すって言うんでしょ? いいわ。その条件でいきましょう。私が逃げ出さない様にこの地の関所に見張りでもつけておきなさいよ。ただし、危険な場所に行くことになるだろうから私自身に見張りは付けない方がいいわ…死にたいのなら話は別だけど。」
村長も含め、あれだけ憎悪を見せていた村人達もひとまず納得したのかあまり騒がなくなった。私はそれを了承したと解釈して早々に踵を返す。自身の終焉が刻々と迫っている以上、一分一秒たりとも惜しい。
それにこれからやろうとしていることは、あいつらに見られるのは非常にまずい。村人達の気が変わる前に、あいつらが踏み込めない危険地帯まで私は歩を早めていく。
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