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 私はあのドラゴンを討伐した場所を目指しながら、どうすれば殺してしまった事実を覆せるか考える。とはいっても、策はたったひとつしか残されていなかった。  誰か別の罪人を立てようにも、あのドラゴンを倒せる様な魔物がこの辺にはいないことはあの男達から言われなくとも分かっていた。この山の頂上にある火口付近にドラゴンかワイバーンの類いがいるかもしれないが、仮に奴らが共食いしたことにするにせよ、村までその亡骸を持ってくることは到底不可能だ。挑もうものなら、処刑前に奴らに八つ裂きにされるのがオチだろう。  ならば、もうこの手しか残っていない。  私はドラゴンの屍が横たわる丘陵までたどり着くやいなや、近くにある水辺を探す。丁度拳二周り分の小さな泉の様になっている川辺が目につく。私は近づいて鞄から紅色の珠を取り出し、泉に投げ入れる。呪文を唱えてしばらくすると、珠がゆっくりとこちらに向かって動き出し、大量の水を纏った姿でぷるぷると揺れながら水辺から地面に出てくる。 「へぇ。魔法使いのニンゲン、それも若そうなメスじゃん。こりゃあ上物に巡り会えてラッキーってやつだね。」 「…あんたがスライムね。ひとつお願いがあるんだけど、聞いてくれるかしら?」  いいよ、と二つ返事で答えるスライムに私は事の経緯を説明する。スライムはぷるぷると震えながら話を聞いているみたいだが、表情はおろか顔すらないその姿からは本当に聞いているのかどうかは知るよしもない。ただ時々ふーん、だの大変だね、だの相槌を返してくるので、耳がないその体でも一応話は理解できているみたいだった。 「で。結局ボクに何をして欲しいわけ?」 「あんた達スライムはどんな形にもなれるのよね? ならそこで死んでいるドラゴンの形になって欲しいわ。」 「なるほど。その神龍とやらが生きている様に偽装工作するんだ。それならボクは適任って所なんだろうけど、残念だけどそれは無理だと思うな。」  お願いする立場としてなんだが、いきなり拒否されるのは多少の苛立ちを覚える。無理ってどういうことだ。あれさえ差し出せば形を作ることぐらい何でもできるのではなかったのか?
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