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「召喚された分際ですぐに拒否されるのは癪に触るんだけど? 何か理由があるのかしら?」
「キミこそ切羽詰まってるなら口の聞き方に気を付けた方がいいよ? 普通に考えれば分かるでしょ。魔物の頂点に立つドラゴンの真似をするなんて無理だって。どれだけの魔力や素材が必要だと思ってるの。」
命がかかっている以上、無理と言われても引き下がる訳にはいかない。何が必要なのか杖で小突いて問い詰めると、スライムは嫌そうに必要な物を語りだす。
「まずは大元の型がないとダメだよ。今回の場合はそこのドラゴンの死体でそれは賄えるよ。誰かに食われてなくて良かったね。」
「何だ。無理じゃないじゃない。」
「話は最後まで聞こう? 死体だけじゃその魔物の形だけで、動きまでは再現できないよ。さも生きているかの様な動きを出すためには、その生体を取り入れないと。」
「…生け捕りにしろってこと?」
「生きていれば別に成体じゃ無くてもいいよ。例えばそう…卵とかね。」
つまりドラゴン種の卵を盗めってことか。ただでさえ狂暴な魔物なのに、その卵を盗もうものなら地の果てまで追いかけてくるだろう。八つ裂き程度じゃ済まないだろうなと思うが、背に腹はかえられない。成体を直接相手にするより遥かにマシだ。
「分かったわ。それを用意すればいいのね…やるわよ。それしか道は残されていないんだし。」
「どう考えても詰みだと思うけど、まぁ頑張るというならお好きにどうぞ…さて、話も纏まったことだしそろそろアレをくれないかな? 早くしないと死んじゃうよ? ボク。」
そう言ってスライムはこれ見よがしに突起物みたいな物を作って、私の前でちらつかせる。悪魔と同じ様に、このスライムも召喚者の願いを叶えてくれる代わりに対価を要求してくる。悪魔の場合はそれは召喚者の魂…つまり己の命だけど、スライムの場合はそれよりももっと軽い、召喚者の魔力だ。
相手はただの水の塊とはいえ契約は契約。代償を払わない限りは成立しない。そしてその支払い方法は…想像しただけで顔が熱くなってくる。
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