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繁華街の裏路地に回り、途中の路地より壁を背に開閉式の窓よりさらに
人気のない貸ビルの一室の扉を閉める。
元々は何処かの土建会社の事務室として使われていたそれを、今は女の寝床
として与えられている。
給湯室跡でクレンジングしてメイクをおとす、元々たいして手を入れずとも
ハッキリした顔立ちのMIMAは外向けの顔に化けることが容易だ。
中央の灯りをともし、スマホから気分にあった曲を最大ボリュームで鳴らす。
今夜の気分はラブサイケデリコからのキングヌー…かな?
つぶやきながら、アップテンポの曲に細い腰をくねらせ、左手でリズムを刻む。
フンフンフーン♪…頭を左右にふりながら、おもむろに三人がけの黄色のソフ
ァーベッドに脱いでおいたコートとブラウス、その下のブラも面倒くさそうに
投げ捨てる、外のネオンが色とりどりに、時より女の半身を照らし、その影を
ハッキリと部屋の壁へと投影する。
最後にタイトミニを指先で投げると、黒のショーツ、一枚のまま煙草をくわ
え、長い黒髪のウィッグを備え付けのマネキンの頭にかぶせた。
「はぁぁ…今日もお疲れMIMA…バイバイね…。」
誰となくつぶやいて、長めの金髪ショートヘアーは、自分のコメカミに右手
の人差し指と薬指で、ピストルのような形をつくり、グリグリと押しやりはじ
める。
目を閉じたまま、その仕草を約30秒…。
うつ向いたままから、おもむろに顔を上げ“うしっ”と、ひと呼吸。
クローゼットとタンスからくたびれたTシャツ、黒のジーンズ、黒のフランク
三浦の腕時計に三日月のシルバーチョーカーを首下に隠すと、黒のキャスケッ
ト帽を被り再び夜の街へと消えた。
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