豚に真珠そのあとに〈ことわざ後日譚〉

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豚に真珠そのあとに〈ことわざ後日譚〉

 豚は戸惑っていた。今朝、飼い主である王様から突然に、真珠の首飾りをかけられたからである。それはとてもキラキラと輝いていたが、残念ながら美味しそうには見えなかった。きっと口には入れないほうがいいだろう。  豚は最初、一部の凶暴な動物たちのように、いよいよ自分にも首輪をつけられたのかと考えた。しかし豚は王様に飼われている他の動物らと比べても、特に素行不良なところはないと自負していたし、なによりその首飾りは、頑丈というよりは繊細と表現すべき代物であるように見えた。豚の足でつけはずしなどしようものなら、一発ですべての真珠が四方八方へと弾け飛んでしまいそうだ。  しかし豚は王様に逆らうことに身の危険を感じていたので、すぐに首飾りをはずそうとは思わなかった。豚は常に王様に対して忠実であり、だからこそこれまで首輪もつけられることなく、行動の自由を与えられていた。その重厚な首飾りの重みと吸汗性のなさゆえ、肩こりと湿疹を発症する予感はあったが、それでも首をはねられるよりはずいぶんマシであるように思えた。
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