36、最終話 莉子の本当の誕生日

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36、最終話 莉子の本当の誕生日

一ヶ月後。莉子の家のリビング。 「誕生日おめでとう!」 先月は莉子の誕生日を間違えて、一ヶ月早く誕生日プレゼントのパンダのぬいぐるみを渡した春樹であった。 「ありがとう」 「これ、うちの親からの香港のお土産のパンダグッズ」 「こんなにいっぱい! 先月パンダもらったからいいのに。めっちゃ嬉しいけど」パンダのぬいぐるみを抱きしめながら、たくさんのお土産に歓喜する莉子。 「あとこれ!」 「何これ。開けていい?」リボンをほどいて包装紙をビリッビリに破いて箱を開ける。「こここれは……!」 夏生とショッピングモールに行った時に売っていた、パンダ柄のブラジャーとパンツが入っていた。 「絶対、莉子に似合うと思って! もうハミケツすんなよ。パンツはハミケツしないようにサイズいっこ上げといたから」 「ハミケツのことは話題にしないで。恥ずかしいんだから。何でサイズ知ってんの?」 「夏生から莉子のお母さんに聞いてもらった!」 夏生と莉子の母はたまにお茶している。付き合うつもりはなく、ただのお友達のようだ。ミコは年下の男とたまに会えて嬉しいそうだ。 「えええ? 夏生さん私のサイズ知ってんの? やだあ」 「しょうがないだろ、夏生の会社の社販で安く買ったんだから」夏生はアパレルの会社の倉庫で働いている。 「まあこれ欲しかったからいいや……」莉子は諦めた。 「なあ、莉子」 「ん?」 「人間に戻ってからちゃんと言ってなかったんだけど。……好きだよ」 「ん……。私も好き」 「チューしていい?」 「そういうのは聞かないで自然にしてよ」 「ごめん」 「チュー、いいよ」 「うん……莉子」 春樹が莉子の顔に近づく。パンダのぬいぐるみは莉子と春樹の間に挟まれている。 ガチャッ 玄関のドアが開いた。 「莉子ちゃん、ただいまー!」「パンダケーキ買ってきわよ〜!」莉子の母親ミコと夏生だ。 「「……」」顔を見合わせる莉子と春樹。 「あれ、春樹君来てたんだー」「お邪魔しちゃったかしら〜?」夏生は女装している。 「春樹来るって言ったじゃん」「邪魔って分かってただろ」 「皆でお祝いしよー!」「ごちそういっぱい買ってきたわよ〜」ケーキやピザを並べる二人。 ガックリする春樹。「ああもう二人っきりになれないじゃん。またぬいぐるみになりたい」 「そういうこと言わないほうがいいよ」トントンと春樹の肩をたたく莉子。 その日の夜。 モゾモゾモゾ 「おっ、この小さい手足。またぬいぐるみに乗り移っちまったな」喜ぶ春樹。 モゾモゾモゾ 「ん〜?」声がする。 「あ、莉子!」 「莉子ちゃんじゃないわよ〜」 「ゲッ、……夏生じゃん」 夏生のカエルのぬいぐるみになっちゃった春樹であった。 おしまい
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