【南の国編】 41. 影絵芝居

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「ふああ」  ソファの背もたれに首を休めるセルンとニロを交互にみて、こっそりため息をこぼす。  険悪な雰囲気ではないけれど、微妙に空気が重いのよね……。どうすれば二人はもっと仲良くなってくれるんだろう……。  しばらく沈黙が続くと。 「……スー」 「?」  セルンの規則正しい寝息が聞こえてきた。  まあ。珍しい。セルンがすやすやと眠っているわ……。  やはり昨日は無理をさせちゃったみたいね。  部屋に控える使用人に毛布をお願いすると、それをセルンにかけた。それに気づいたニロは顔をしかめ、近寄ってくる。 「……ぞんざい千万」 (あ、起こさないであげて、ニロ! 昨日の夜遅くまで相談に乗ってくれたから、セルンが疲れたのよ)  ニロの手を止めてそう説明すると、相当セルンの態度が気に障ったのか、ニロはひどく険しい表情を浮かべた。 「夜、遅くまで……?」  重厚感のある声と共に、絡めあっていた銀の瞳が眇められ、逆に手をつかまれた。  え、なに。 怒りの対象は私なの……?  「具体的にどこで何時までだ、フェーリ?」  か、顔が怖い……。  思わず後ずさる。 「……ん? 相談?」  近くまで迫ってくるニロが怒り出すかと思いきや、突然首を傾げた。 (あっ、それならもう解決したから、気にしないで……!)  瞳でそう返すと慌てて彼から目を逸らす。  ニロのことで悩んでいたなんて知られたら恥ずかしい……。 「何の相談だ、フェーリ?」 (些細なことだよ……! ニロが気にするほどでもないわ!)  相談の内容をなるべく考えないでそう返せば、見逃さんとばかりに銀の視線が私の目を捉えてきた。  なんとなくバレる気がして不意に窓の外に目をやると、ピカッとなにかが光った。  ん? いまのはなんだろう?  窓枠に手をかけて見上げると、山の上に黄色い建物が目に映った。
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