【南の国編】 41. 影絵芝居

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 悲しそうな顔。  罪悪感で眠れなかったのは本当だけれど、よかったと思うこともあるのに……。 「いやな、思い。……だけ、じゃない……」 「……ん?」  頑張って唇を動かすと、その声に反応してニロは首をひねった。  いまは恥ずかしがっている場合じゃない。ここはちゃんとニロに伝えないと……。 「ニロの、気持ち。……知れて、嬉し、かった……」    思い切って言ったけど、やっぱ恥ずかしい……!  ドクドクと心臓が早鐘をうつ。  少しでもその音を鎮めようと息を止めたら、ドスン、と音を立てて、ニロが床に座り込んだ。 「ニロ、大丈夫?」 「……近くにくるな。フェーリ」  自分の膝を抱えて、ニロは顔を(うず)めた。  その首筋はなぜかリンゴのように赤くなっている。 「……どうしたの?」  ニロの肩に手をかけて問いかければ、ちらりと腕の隙間から熱っぽい視線を感じた。 「また、制御が効かなくなるゆえ、余の近くにくるな……」  制御が効かなくなるって、つまり……っ。  ドキンと飛び上がって、ニロから距離を取った。  あつい、顔が熱い。  きっと真っ赤だよどうしよう……。  悶えていれば、しぃんと奇妙な沈黙が流れた。  うっ、ニロが固まってるわ。  先に声をかけるべきだよね? ……いや、ここは黙って待つべき、かな……?  前世から恋愛経験がないから、この場合どうすればいいのかわからないよ……って、恋愛⁇ で、でも私とニロは、別に……っ。  混乱しながらつくねんと座っていれば、目の前にニロの手が伸びてきた。 「フェーリ。ち、……んんっ。……ちとだけ、お前の手を繋いでも、よいか……?」  顔を半分腕にうずめたまま、ニロは私の様子をうかがった。あれ、ニロも真っ赤だ……。  いつもと違う。少し甘いその雰囲気にふわっと胸が揺れる。
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