【南の国編】 41. 影絵芝居

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「あげりゅ……。これで全部、グスッ……」  とポケットから飴を取り出した男児は潤んだ茶色の瞳で私を仰ぎ見る。  それ、なんで私に差し出すの……?  ショックを受けて棒立ちになっていると、隣からニロの声が聞こえた。 「なんだ。飴をくれるのか? ありがたいな」  ニロは男児の背丈に合わせてしゃがみ、飴を自分の口に入れた。 「ふむ。これは美味だな」  言いながらポカンとする男児の口にも飴を放り込み、問いかける。 「そうであろう?」  よくわからないというような顔で男児が頷くと、ニロは優しく彼の頭を撫でて笑った。 「これで皆仲良しだ。もう臆すことはない」  ニロの声を最後に塔の中がしんと静まり返った。  あれ、もう泣き止んだ。  一瞬で子供たちを落ち着かせるなんて、……すごいわ、ニロ。 「ベイサ、じゃない……?」  一拍遅れで一番年上の男の子がそう動揺すると、ニロはゆっくりと彼の方に手を差し出した。 「ふむ。あやかしではないぞ。触ってみるがよい」 「ほぇ? ぇ、わぁっ! 本当だ……!」    男の子は恐る恐るニロの指を引っ張り、目を剥いた。  まあ、伸びると思ったのかしら? ふふっ、可愛いわ。 「お姉ちゃんも、人間……?」  左右に束ねられた黒髪を揺らして、女の子がちらりと顔を出した。  コクコク首肯して、私も手を差し出すとすぐに握ってくれた。 「肌が白いのに、あったかい……」  女の子は意外そうに呟き、茶色の目をキラキラさせて私の顔を見上げてきた。  ん? 顔になにかついているのかな?
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